2011年10月5日水曜日

ベンチャーで働くコンサルタントの気づき

このBlogを始めてから、早いもので1年が経ちました。
その間、IT投資マネジメントに関する調査、研究、実務に関わってきた中で、多くの研究者、一流のコンサルタント、経営マネジメント層の方々との出会いがあり、表面的な知識から一歩踏み込んで、多くの気づきを得られた気がしています。

今回は、自分のための振り返りを兼ねて、多くの出会いから得られた(私自身の)気づきについて、少しご紹介したいと思います。

書いてみると、思った以上に?色々な視点の気づきが多くあったので、まずは「ベンチャーで働くコンサルタント」というテーマで振り返りをしてみます。
客観的に見れば「IT投資マネジメント」から少し離れたテーマになりますが、私の中では密接に繋がってますので。。。
そして、IT投資マネジメントをテーマとした振り返り(気づき)については、次回以降ということで(^^;


■実務者は研究者(学術関係者)から学ぶべきことが多くある
→このBlogを見てくれる方の多くは、私と同じ実務者の方ではないかと思いますが、実践的と称される書籍や情報ばかりをInputとしていませんか?
→勉強会や学会に参加していると強く感じますが、研究者の方々は「実務者との距離というか、実務から学ぶべきこと」を意識されているのに対し、(自身への反省も含め)実務者側は、研究者から学ぶということに対する姿勢が不十分だなーと。
→まぁ、ぶっちゃけて言えば、毎月のように開催されている微妙なIT系のセミナーに参加するよりも、研究会/学会に参加した方が、実務上も役に立つなーと思います(^^;

■情報は受信するよりも(間違っていても)発信した方が、結果的に多くの情報を得られる
→普通に考えれば、有限の時間の中でInputとOutputを考えると、Inputに専念した方が多くの情報を得られそうな気がしますが、実際には自分のOutputに対して量的にもそれ以上の情報が(周囲の方々から)得られたり、質的にも大きな価値がある(情報として頭の中に整理できる)Inputになって戻ってくることが多いなーと。
→ブーメラン的に得られた情報の価値について、脳科学とかから論証できたりするとカッコイイのですが、残念ながらその手の知識は無いので推測に過ぎませんが・・・自分で考えたコト(興味を強く持った情報)の方が、関連する情報も含めて記憶領域にしっかりと残るんぢゃないかと。
前職のコンサルファームにいた時から情報を発信することの重要性は漠然と感じていましたが、ベンチャーに転身し、自動的に受信する情報が以前よりも少なくなったので余計に強く感じます(^^;

■一流のヒトほど専門分野以外の多くの分野から学んでいる
→「専門性が高い=該当分野のみを追いかけている」と勘違いをしていませんか?(私はそう思ってました・・・)
→しかし、実際に専門性が高いヒトはその分野のみを追いかけていることは少なく、広範な分野から学ばれていて、それが結果として専門性の深さに繋がっているなーと。
→私自身も、(少しだけではあります&まだまだですが)追いかける範囲を広げたことで、見えてきたコトもあるなーと、 感じています。

■環境/境遇が違うヒトとのコミュニケーションを通して、本質に気づく(ことがある)
→要は類似した職種、業種のヒトとのコミュニケーションは(会話の前提があって)簡単なのですが、一方で無意識に前提を持ってしまっているため、本質を得ていないことがあるなーと。
→逆に、環境/境遇が違うヒトとのコミュニケーションは、言葉一つの意味でさえ違っていることもあり、その状況下で説明、意見交換をしていると、そのプロセスを通して本質に気づくことがあると感じています。

如何でしょう?職種や環境が違うヒトも多いと思いますが、共感して頂ける点はありました???

色々と書きましたが、私自身もまだまだ発展途上?の人間なので、振り返りは重要ですね。

何より、今回の振り返りで一番重要な気づきは、、、「せっかくの気づきを、(日々の仕事に終われて)イマイチ実践できていない(活かせていない)かも???」ということでした(>_<)

という訳で・・・今回のエントリーは、私自身の備忘録としても、しっかり活用したいと思います(^^;

2011年9月8日木曜日

IT Reform or ITリフォーム?

本業が忙しかった上に体調不良も重なって、更新間隔が空いてしまいましたが、今回はIAIA(行政情報システム研究所)の記事から、米国政府のIT投資に関する興味深い話を見つけたので、その話をご紹介したいと思います。


この記事は、今年の8月に米国政府CIOに着任したスティーブン・バンロケール氏が各省庁のCIO向けに主たる責任や権限を提示した覚書の内容を要約されたものですが、その中から一部を引用させて頂くと・・・

【覚書の概要】
CIOの役割は今までの政策立案やインフラ運用から脱却し、本当の意味でのITポートフォリオ・マネジメントにシフトするべきである。 
これにより、各CIOは各府省庁のミッションや業務に有効なITソリューションを導入することが出来ると同時に、組織横断的なソリューションの導入に対する阻害要因である官僚的組織を打破することが出来るであろう。 
なお、各府省庁CIOの主たる責任や権限は「ガバナンス」、「共通システム」、「プログラムマネジメント」及び「セキュリティ」の4項目から構成される。

やはりというべきか・・・米国では、「ITポートフォリオ・マネジメント」が重視されていますね。
「ガバナンス」と「セキュリティ」が明確に分けられている辺りは、米国らしい気もしますが、軸を明確に区切って管理することは重要ですよね。

この話は米国の官公庁の取り組みに限った話ではなく、国内の大手企業においても当てはまる気がします。
グローバル企業は勿論のこと、ガバナンスに課題(悩ましさ?)を抱えるグループ事業にとっては特に・・・(^^;


そして、この覚書に関連する下記の記事からは、OMBが「IT Reform Plan」を掲げてIT投資のマネジメントを見直していることが分かりました。

この記事をパッと見た時に、IT Reform Planという表現が目に留まりました。

少し話が逸れますが、今年の初めに日経コンピューター(1月6日号)の記事「さらば、新規開発」を見てから、そこで触れられていた「ITリフォーム」のアプローチに興味を持っていたこともあり、やはり時代はITのリフォーム(新規構築ではなく、骨格を残した上での見直し)を求めているのかなーと漠然と考えていて、

気になったので、2010年12月に制定されているIT Reform Plan原文を調べてみると・・・「Reform」の意味合いが私の認識と違ってた(T_T)

日本語で「リフォーム」と書かれると・・・住宅用語からのイメージで改築、改装といった見直し的なニュアンスをイメージします(上述の日経コンピューターでも同様のニュアンスで使われています)が、これは和製英語の使い方なんですね。

reformを普通に訳すと、改革、改正という意味でした(改良というニュアンスも無くはないけど)。

「IT Reform」も「ITリフォーム」も重要であることには変わりは無いのですが、少なくとも海外の文章からIT Reformという表現を引用するときには気をつけよう(^^;

2011年8月4日木曜日

IT投資の波、IT部門の工場化について・・・

今回は、最近見たZDNetの記事の中に、IT投資マネジメントを考える上で非常に興味深い話があったので、その話を少しご紹介したいと思います。


まず、「日本に残る巨大戦艦志向」というサブタイトルで、国内企業のIT投資案件規模の話が触れられていますが・・・下記の指摘はとても興味深い指摘と思いませんか?
  • IT投資の波(大規模投資とその償却サイクル)を考えている企業がある
    →「経営を説得できる理由がない」と悩んでいるが、前時代的発想でナンセンス 
  • 国内企業の開発案件の投資規模は、世界の中でも群を抜いて大きい
    経営視点でのキャッシュの平準化が図れない上、コントロールリスクも高い


次に、「費用対効果を測りにくい大規模案件」というサブタイトルで、大規模案件の投資管理の3つの問題点が挙げられていますが、これも納得です。

  • 「投資対効果を説明し難い」(定性的な話を絡めないと正当化ができない)
  • 「規模の不経済が発生する」(案件規模が拡大すると、生産性が低くなる)
  • 「失敗の確率が高まる」(ステークホルダーも複雑化し、失敗要因が増える)


案件規模を小さくすればそれだけでイイと単純に言うつもりはありませんが、案件規模とリスクのの関係は「比例」どころか、「指数関数的」なんじゃないか?と感じることがあります。

#私の知る限り・・・「戦艦大和」PJでは、船長でさえ過去に「大和」を作ったことが無い場合も少なくない上、クルーの一人一人も全体像が見えてない中で進みますから、計画通りに目的に到達する確率は高くは無く、、、それどころか、一歩間違うとデスマーチがやってくるような気がします。
#大規模PJのマネジメントに関わっているヒトは、同じような思いをされたこともあるのでは?(^^;

キャッシュ負担の波が経営に与える影響も同様で、普通に考えたら投資に波があることでデメリットはあっても、メリットって何も無いですよね。

記事の中の例示のように、個別案件を同等規模に細分化することに優位性は感じませんが、案件規模をある程度平準化することによって得られるメリットは大きいですよね。ITIM的に言えば、ポートフォリオとして管理しやすいですし(^^)v



こちらはSOAに関する記事ですが、上記と同じ方が書いており、鋭い指摘だなーと思います。私が特に共感した点を引用&要約してご紹介すると・・・

  • 新しい取り組みをする場合、「プロジェクトをどういう体制で進めるか」は非常によく考えられることが当然となってきたが、「組織が時代に適しているか?」「IT投資の在り方は時代に適しているか?」という視点で課題設定をしている企業にはあまりお目にかからない。
  • SOAの技術は「呼び出す方は呼び出される方を気にしない」方向に進化しており、それがService化の方向性である。そういう意味では、組織全体もユーザーに細かいことを気にさせない方向にシフトするのは、ある意味当然である。
  • IT部門は単に技術がよりService化を求めるからService部門化するのではなく、ITが提供するサービスが一層Service化する方向になるから、Service部門化しなければならない。

詳しい内容はリンクから記事を参照して頂きたいと思いますが、この記事の著者が指摘している通り、目の前の問題点の解決策ばかりに重点が置かれすぎて、そもそも・・・の部分の議論が十分では無いケースは多いと感じます。

IT投資マネジメント分野に絞って言えば、「その投資が妥当か否か?」には注力が置かれますが、「そもそも投資判断の方法は従来と同じで良いのか?」の検討が欠けているというか、前提条件化されてしまっている企業が多いと感じます。
→正しく言えば、実務上の担当者はその前提条件化された問題を認識しているものの、担当者のパワーではその前提条件を変えられずに悩んでいるケースもありますね。

また、サービス化の流れとService部門化の流れは、表現としては分かり難いのですが、こちらも「納得」です。

このエントリを見て興味を持ったヒトは、是非リンクから記事を参照してみて下さい。はてなB登録もあまりされてないようでしたが、とても気付きの多い記事だと思います。

そして、共感してくれた方は、最後に「いいね」ボタンをポチっと。。。(^^)v

2011年7月19日火曜日

「インタンジブル・アセット」を読んで

今回は、久しぶり?の書籍コメントです。
Booklog本棚に登録している通り、IT投資マネジメントの関連文献はちょこちょこと読んでいるのですが、今回の本ほど「なるほど!」と「難しい・・・orz」が混在している本は珍しいかも?ということで、一部を引用しながらご紹介したいと思います(^^;

インタンジブル・アセット―「IT投資と生産性」相関の原理インタンジブル・アセット―「IT投資と生産性」相関の原理
エリック ブリニョルフソン Erik Brynjolfsson

ダイヤモンド社 2004-05
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2004年に書かれた本なので、事例(モデルケース)には古さが残りますし、複数の論文の組合せで構成されているため非常に難解な文章、数式も少なからず出てきますが、それらを差し引いても読む価値がある(重要な示唆がある)本だと思います。

まず初めに、インタンジブル・アセットとは・・・「(企業の情報化による生産性向上に寄与する)人材やノウハウのような目に見えない資産」のことを指していますが、

序章で触れられているロバート・ソローの「生産性パラドックス」の通念(コンピューター時代の到来はいたるところで感じることはできるが、生産性統計には表れていない)に対する2つのメッセージが、シンプルで共感が持てます(^^)

  • 「コンピューターへの投資効果がゼロだという仮説は排除できない。しかしその一方で、標準誤差が大きいからといって、投資効果がかなり大きいという仮説を排除することもできない」
  • 「証拠の不足は、不足の証拠にはならない」


そして、インタンジブル・アセットの重要性を証明するための?投資への考察が興味深いです。

  • 業績が良く最も企業価値が高い企業は、IT投資額が多く、さらに組織的資本への投資額はそうでない企業の10倍にも上っていた。
  • つまり成功した企業はIT(ハードウェアおよびソフトウェア)へ1ドル投資するごとに、業務慣行を支援するために10ドル投資したことになる。


次に、「高生産性企業の七つの原則」については、この部分だけを読むと当り前のコトを書いているように感じましたが、本書を一通り読み終えた後に振り返ってみると、「確かに。。。」と納得できる部分が多いと思います。(以下は、省略した形の引用文です)

  1. (テクノロジーの導入に際しては)アナログからデジタルの業務プロセスに移行すること
  2. 意思決定責任と決定権を分散すること
  3. 社内の情報アクセスを促進し、コミュニケーションを活発にすること
  4. 年功序列ではなく、個人の業績に基づいた給与体系とする(報奨制度とリンクさせる)こと
  5. 事業目的を絞り込み、組織の目標を共有すること
  6. 最高の人材を採用すること
  7. 人的資本に投資する(教育や研修に費用と時間をかける)こと

「デジタル化による事業変革の原則」については、特定の手法によることの是非だったり、今となっては・・・という部分もありますが、例えば「インターネット」→「ネットワーク」と読み替えると、納得感は高まりますね。
  1. 情報技術だけでは十分ではない。デジタル事業には、製品情報の提供や製品・サービスの注文などのウェブサイトの構築や基本的機能の導入以外に実施すべきことが多数ある。
  2. マトリックス・オブ・チェンジを活用して、自社の業務形態の相互補完精について理解する
  3. 補完的試算を現行の事業システムから目標の事業システムへの移行に活用するためにインターネットを利用する
  4. 企業と経営者は、ただ他社の業務形態を模倣するのではなく、事業を発案(または再発案)するつもりで取り組む必要がある

表現が全般的に難しい本なので、完全に理解するには今の私では力不足な気もしますが、著者が言わんとすることは、何となく?理解できたと思います。

要は、「IT化投資で生産性を向上するためには、直接的なIT化への投資だけでなく、スキル、組織構造・プロセス、企業文化等の目に見えない資産の価値を高める投資が重要」ということですね(^^)

今まで、経験則の延長であったり、主観的な主張としてこのような話を耳にするコトはありましたが、膨大なデータ、様々な事例からロジカルに論証しているところが、MITの著名な教授の著書ならでは。。。という気がします。

気軽には読みにくい本ですが、過去の事例の勉強も兼ねて・・・興味がある方は是非!
この本を読んで、私もちょっとだけ賢くなれた気がします(^^;

最後に・・・本書ではIT投資の中でも特に「生産性向上とインタンジブル・アセットの関係性」に焦点が絞られていますが、「資産」という概念はクラウドの活用、IFRSへの適合等を踏まえた今後のIT投資マネジメントを考える上でも重要なKeywordになると考えられています。
その話は、また今後どこかでしっかりと触れたいと思います(^^)v

2011年7月7日木曜日

初めての学会で学んだコト

今日は七夕ですね。綺麗な夜空が見たかったなぁ。。。
七夕には何ら関係ありませんが、先週末に人生初の学会に参加したので、今回はそこで学んだコト、感じたコトについて、少しご紹介したいと思います。


日頃からお世話になっている武蔵大学の松島先生のご紹介により、学生時代にも参加したことのない「学会」に初めて参加したのですが、良い意味での驚きが数多くあり、思いもしないほど貴重な経験を積むことができました!


実は・・・開催場所は私の母校だったのですが、、、
何せキャンパスに足を踏み込むのも卒業以来(何年前だ???)という程、学術分野とは縁遠く過ごしてきたため、参加する前までの学会のイメージは、「象牙の塔」に限りなく近かったのですが、
実際は学術関係者に閉ざされた場所ではなく、多くの企業人・実務家にとっても非常に有用な場だと感じました。



IT投資マネジメントの話ではありませんが、私が驚いたコト、多くの実務家の方に共有したいコトを3つ挙げると・・・
  1. 実務に近いテーマも数多く研究されている
    →全ての研究が・・・とは言いませんが、企業内の戦略立案に役立つ研究、サービス企画や運営に直ぐに活かせそうな研究が、数多くありました。
  2. 社会的地位のある先生方が、非常にフランクに接してくれる
    →私も若くは無いものの・・・著名な学会だけあって参加者の多くは教授、准教授という肩書きを持つ年配の方が中心でしたが、発表時の質問には丁寧に答えてくれるし、懇親会の席でも物腰柔らかで、人間的に魅力ある方が圧倒的に多かったです。
  3. 発表者のプレゼンが、驚くほど上手い!!!
    →正直なところ、学術関係者の方がプレゼンをするイメージはあまり無かったのですが、本当にプレゼン上手な方が多くて、「人前で話すのは得意かも」と勘違い?していた自分が恥ずかしくなりました。。。ホントに。

ここまで読んでくれた方の中には「何のPRだ?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、純粋に企業の実務家も、もっと学会に参加して勉強すべき。。。と実務家の一人として強く感じました。
しかも、参加費用を考えても、微妙なIT系のセミナーに比べて圧倒的に有意義だなーと(^^;


ちなみに、私が参加させて頂いた発表は下記でした。
  • 7/3(日)13:00~ IT投資マネジメントの変革
    →もし、発表された論文に興味がある方は、個別に連絡下さい。
    関係者に確認した上で、ご案内します。

松島先生が発表者兼司会者を務めながら、他の先生方との合同で約2時間の発表、意見交換(議論)という流れのセッションでしたが、多くの人から質疑の声が上がり、非常に活発な議論であったと思います。
#強いて問題を挙げるとすれば、私が緊張のあまり上手くしゃべれなかったことぐらい。。。(>_<)


今回は、知識の面で多くのことを学べたことは勿論のこと、モチベーションという面でも良い刺激を受けましたし、そして何より人との出会い、意見交換ができたことは「Priceless」だなーと、強く感じた2日間でした。

私の会社の活動コンセプトの一つに「つなぐ」というKeywordがあるのですが、「研究」と「実務」をつなぐ存在になりたいなーとの思いが強くなりました(^^)v

最後に、貴重な機会を下さった松島先生、及び懇親会で若輩者の意見に耳を傾けてくれたITIM研究会の皆さん、本当にありがとうございましたm(_ _)m