2012年1月26日木曜日

「バランス・スコアカード導入ハンドブック」(吉川武男・ベリングポイント著)を読んで

年末から書籍の整理を進めている中で、、、以前読んだ本の中から、新たな気づきがあったので、ご紹介します。

バランス・スコアカード導入ハンドブック―戦略立案からシステム化までバランス・スコアカード導入ハンドブック―戦略立案からシステム化まで
吉川 武男 ベリングポイント

東洋経済新報社 2003-10
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2003年に発刊された本のため、事例や紹介されているシステム等は古さを感じますが、タイトルの通り「バランス・スコアカードの導入」に関しては、数少ない実践的な本だと思います。

本書は5つの章+付録で構成されていますが、個人的には2章、4章、付録が気に入っているので、その中から一部を紹介します。

■第2章.バランス・スコアカードの導入の成功と失敗
<主要な失敗の要因(第2章より引用:P.25)>
①中間管理職のみによるバランス・スコアカードの導入。
②バランス・スコアカードを密室のうちに購築すること。
③バランス・スコァカードを経営トップだけのものとすること。
④バランス・スコアカードの構築と導入に時間がかかりすぎること。導入に時間がかかりすぎると、勢いを失い、時には有害とすらなる。
⑤プロジェクト・マネジメントに関する熟練度の欠如。
⑥バランス・スコアカードを単なる業績評価プロジェクトとして取り扱うこと。
⑦バランス・スコアカードを単なるITプロジェクトとして取り扱うこと。
③社外の助けを得る際、経験のないコンサルタント等を誤って起用すること。

→「こうやれば良い」は重要ですが、「こうやったらダメ」という話は、もっと重要ですね。


■第4章.バランス・スコアカードの導入方法
具体的なアプローチがしっかりと纏められていますが、中でも特に共感した点を引用します。
顧客の視点での戦略テーマとは、売上高、利益、キャッシュフローといった結果に結び付くためには、顧客の信頼をどう勝ち得るかという共体的な行動計画である。「マーケットシェア○○%獲得!」といった売る側の論理に立った目標設定よりも、「ほしいものがすぐ手に入る店舗の実現」といった顧客が真に評価する行動計画であることが望ましい(P.87) 
バランス・スコアカードは作ることが目的ではなく、使うことが目的である以上、まず作ってみて使ってみてから、その結果に基づき視点を付け加えたり、視点間あるいは業績評価指標間のウェイトづけを変えるといった工夫を重ねていくべきものである。(P.100) 
頻繁に出る質問に「バランス・スコアカードには指標はいくつ必要か」というものがある。法則性があるわけではないので、いくつでもかまわないが、筆考の場合は各視点に2個から5個、したがって4つの視点で8個から20個と答えている。1つの視点に5つが一般に管理できる限界であり、また視点の中での重みが20%以上になると、その指標を重点的に管理しようという気が起こらなくなってしまうだろう。(P.102)
→ハンドブックという名に相応しく、実践的な指摘ですね。


■付録.KPIライブラリー集
重要成功要因、KPIだけで400項目、計30頁に渡って紹介されています!

私自身、数年前にこの本を読んだ時には「なるほど」という程度の印象しか無かったのですが、少し前に評価指標を考える機会があり、改めてこの本を手にとって見ると・・・(バランス・スコアカードの活用に限らず)、使えるなーと感じました。
バランス・スコアカードの概念を考えれば、既定のKPIを使うことが必ずしも良いとは限りませんが、指標を定義する際の視点は広がるのではないかと思います(ブレスト等でも役立ちそうですね)。

ちなみに、付録のKPIライブラリー集以外にも、各種チェックシートとして活用できる付表も、現在でも使えるとても有用な内容と感じます。


バランス・スコアカードの概念は理解しているけど、実践するにはちょっと壁が・・・と感じている方は勿論のこと、(バランス・スコアカードに限らず)具体的な活動指標を決めたいけど上手く纏められないという方には、オススメの本と思います。

紹介と言いながら・・・感想文のような内容になってしまいましたが、既に読んだ本でも改めて読むと、新たな気づきがあるものですね。

新刊のオススメは聞くことがあるのですが、昔の本を薦められる機会が少ないので、今回は敢えて???昔の(と言っても10年前ですが)本を紹介してみました。

きっかけは「書籍の整理」だったのですが、今回の気づきは・・・「(私のように)記憶力が怪しい?人間には「整理」という名の定期的な棚卸が必要」というちょっと悲しき?事実ですね。