2012年3月30日金曜日

「IT Dashboard」に見るIT投資の情報公開

数日前に見かけたIAIA(行政情報システム研究所)の記事から辿った「米国政府のIT投資に関する情報公開」がとても興味深かったので、今回はその話を少し。
昨年9月に「IT Reform or ITリフォーム?」というエントリでご紹介した話の延長線上の話になりますが、米国はIT投資に関するポートフォリオマネジメントが重視されていますね。




記事の中から、IT Dashboardの目的を引用すると・・・

米国政府全体で700を超えるIT投資を公表することで、各省庁に重複したIT投資の削減、省庁CIOによるアカウンタビリティの強化、そしてプロジェクトなどの活動に関する詳細で正確な情報の提示に必要なツールを各省庁に提供することである。 また、同時に国民に対し、税金がどのように活用されているかを把握できる前例のない「窓」を提供することである。

と定義されています。

今回のアップデートの要点は利便性に関わる話が中心だったので、あまり実感は湧きませんが、
2009年に公開されてから僅か数年の間、しかも情報公開という手段によって、
「既に米国政府は40億ドルものコスト削減を成功」
という実績を示していることは、とても興味深いですね。



実際にその情報公開&情報提供の「窓」を見てみると・・・
(出典:Federal IT Dashboard
予想していた以上に情報が公開&提供されていることが分かります。

例えばポートフォリオを見てみると、組織別の支出では国防総省(DOD)が群を抜いていることが分かりますが、
更に情報をドリルダウンしていくと、
◇国防総省のIT投資は陸/海/空軍で概ね均等に使われていること
◇海/空軍では「Data Management」が投資の過半を占めているが、陸軍では「CRM」を中心に投資していること等、投資の内訳/状況がしっかりと開示されています。
また、グラフィカルなUIで必要な情報に辿り着きやすいこと、多くのデータをCSVで再利用可能な状態にしていることろも素晴らしいと思います。

正直なところ・・・ここまでは「ちゃんとやってるんだなー」ぐらいの感覚だったのですが、
投資案件の状況説明は、凄いと思います。

個別の投資案件のページでは、
◇コスト面では年度の投資額は勿論のこと、経年の予算/投資の推移
◇案件状態では評価状況(コスト面/スケジュール面)、評価指標とその具体的な内容
に至るまで、全て開示されています。
(出典:Federal IT Dashboard Global Combat Support System
例示の案件では、コスト・スケジュール共に問題無いので、青信号が点灯していますが・・・当然、案件によってはコスト、スケジュールに問題がある(赤信号が灯っている)ものも当然あります。

情報開示もここまで進むと・・・ホントにここまで広く開示する必要はあるのか?
透明性は大事だとは言うけれど、ここまでガラス張りになると・・・CIOはあまりに大変なのでは?
というのが率直な感想でしたが、
逆に言えば・・・ここまで徹底して開示したからこそ冒頭の投資抑制効果が生まれたとも言えるのかもしれません。

「政府たるもの、上手くいっていないものも含めしっかりと情報を開示すべし」という内部にも厳しい姿勢が根底にあるのかもしれませんね。ホントに凄いです。

更に、IT Dashboardには契約に関する関連サイトがあり、そのサイトでは契約情報もしっかりと開示されています。
(出典:USA Spending.Gov

例えば、IT Dashboardで赤信号案件についての情報を調べれば・・・契約額がいくら?で、その案件をどこのベンダーが担当しているか?という情報もしっかりと開示されています。
上手くいっている案件はベンダーにとっても実績のPRになりますが、諸事情により?上手くいっていない案件の場合は、ある種の公開処刑状態のような気も。。。

結局、米国政府が厳しいのは内部だけではなく、外部に対しても・・・ということですね。
米国政府、恐るべし。

ちなみに、日本の場合は?と気になったので、少しだけ調べてみたところ、e-Govのサイトに「各府省の予算執行情報」として、情報が公開されていました。
◇データ形式はPDFで、再利用は困難
◇グラフィカルなUIは皆無で、情報を探しだすのも大変
という残念な状況ではありましたが、契約情報も公開されていますし、「評価」を除けば概ね同等の情報が開示されていると言え無くもありません。

それにしても・・・同じ情報でも、情報公開の仕方一つで大きく印象は変わりますね。
米国は少しやりすぎな気もしましたが、逆に日本はもう少し頑張ってくれと。。。

IT投資の情報公開の粒度、方法を考えるときに、この日米比較は役立つかもしれませんね。


最後に・・・2010年8月に始めたこのBlogも、エントリを重ねる毎に内容が偏ってきたのでは?という気がしてきたので、次回からは少し趣向を変えようと思っています。
一つのテーマを一人の視点で取り組むよりも、複数の視点で取り組んだ方が、新しい発見もできそうなので。