2014年5月30日金曜日

COBIT5の可能性と課題

河田です。
Blog上は久しぶりの投稿ですが、、、振り返ると数カ月なんてあっという間ですね。

今年から仕事の領域を広げたこともあり、IT投資管理の世界からは少し遠ざかっていますが、自分の備忘録も兼ねて?、今回は、COBIT5について情報を整理したいと思います。

COBITについては、知っている人も多いので改めて紹介するまでもないかもしれませんが・・・
「ITガバナンスのフレームワーク」と認識している人が多いのではないでしょうか?

しかし、COBITの登場から現在までの経緯をひも解くと、実はカバー範囲を段階的に広げてきた興味深いフレームワークです。

COBITフレームワークの進化
(出典:ITGI Japan
COBIT1~COBIT2は、「IT監査と統制のフレームワーク」として始まり、
 COBIT3で「ITマネジメントのフレームワーク」に広がり、
  COBIT4.0~COBIT4.1では「ITガバナンスのフレームワーク」として広く認知されてきました。
   そして、COBIT5は「事業体のITガバナンス」に拡大されています。

このような経緯を経て、制定されたCOBIT5ですが、

  • 事業全体のビジネスを考慮された「ビジネスフレームワーク」であるコト
  • ステークホルダーのニーズへの合致、価値の創出が原則に掲げられているコト
  • 従来のITガバナンスのフレームワーク(COBIT4.1)とITリスク管理のフレームワーク(Risk IT)、そしてIT投資管理のフレームワーク(Val IT2.0)が統合されたコト
の3つは特に注目すべきポイントだと思っています。

ちなみに、本BlogのテーマであるIT投資管理のフレームワーク(Val IT)については過去に何度か取り上げているので、詳しくは下記リンクを参照して下さい。

次に、COBIT5の特徴は・・・と書きたいところですが、非常に広範囲なテーマを包含・網羅したフレームワークであるため、捉え方次第で異なる気がするので、、、ぜひ下記のサマリー、及び本文に目を通してみてください。


リンクだけでは、不親切なので?、あくまで個人的な視点として、Topicsとして気になった点を、以下に列挙します。

  • 事業体全体のガバナンスにフォーカスするCobit5が扱う範囲は、極めて広く網羅的
  • Cobit5の特徴の一つはガバナンスとマネジメントの分離
  • Cobit5のKeywordはガバナンスのEDM(Evaluate Direction Monitor)
  • GEIT(事業体ITガバナンス)はCEO、BODのための舵取り(タテ)を包含(従来のITガバナンスはCIOによる事業部門の舵取り(ヨコ)という位置付け)
  • COBIT5の事業体の達成目標(17個)、 COBIT5のIT達成目標(17個)は、BSCの考え方とひも付く
  • 実務上のインパクトは、Cobit4.1の成熟度から5のCapabilityモデルへの転換

Topicsだけ書いても、分かりにくいかもしれませんが、伝わる人には伝わるはず???
捉え方次第では、非常に秀逸な完成度の高いフレームだと思いますが、一方で課題もあるように感じています。それは、「実務上の活用方法」ではないかと。

私はISACAの会員でもあるので、COBITの考え方を否定するつもりは全くありません(むしろ、推奨する立場です)が、実務家としては、COBIT5は実務上で準拠するためのモデルというよりも、従来以上に「レファレンスとしての活用」が主となるような気がしています。

少し話が逸れるかもしれませんが、あらゆるマネジメント活動には終わりが無く、机上論では・・・「(マネジメントと名のつくものは)全てやるべき」という話に陥りやすい傾向にあります。
しかし、実務上はマネジメント活動に割けるリソースに限界(現実解と言った方が正しいかも?)は常にあるとも思っています。

COBIT5で、ビジネスの貢献まで視野に入れた上で、広範囲に体系立ててしっかり整理してあることは、本当に凄いことだと思いますが、一方で広さと深さを両立したマネジメントフレームワークは、それを活用するためのリソース的な考慮は少し弱くなってしまうのかもしれませんね。

少し前に参加した経営情報学会のプラクティショナルセミナーで、東京海上日動システムズの横塚さんが「知のフレームワーク」というテーマの講演の中で、「マネジメント活動におけるモニタリングの重要性」として話されていたことの方が、実践性は高いと感じています。

COBIT5のように「ガバナンスという事業を支援する仕組み」を目的としたフレームワークは、活動のモニタリングに際して「できている/できていない」に着目せざるを得ないのに対し、知のフレームワークのように「イノベーションという事業に直接的に関係する取組み」を目的としたフレームワークは、モニタリングにおいて「成果」にフォーカスすることができるという性質があるように感じます。

つまり、前者は時としてリソースとのトレードオフを考慮した取組みの優先度をつけ難いのに対し、後者はその優先度がつけやすい(=実務的には活用しやすい)と考えています。

繰り返しになりますが、COBIT5の可能性は「ビジネス全体のコントロールまで網羅されたマネジメントのフレームワークであること」にあり、一方でその課題は「実務上の活用方法」ではないかと思います。
(誤解を恐れずに言えば、従来以上に利用者、利用方法を選ぶフレームワークと呼べるかもしれません)

最後に、今回は難しいテーマを扱ったため、結論も難しい話になってしまいましたが・・・皆さんは、どう考えますか?
COBIT4.1に比べCOBIT5の活用事例は、まだあまり耳にしませんが、もしご存知の方がいらっしゃったらぜひ教えて下さい。

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