2010年9月27日月曜日

経産省(JUAS)の「IT投資価値評価ガイドライン」

IT投資マネジメントのガイドラインに関する備忘録?の第四弾として、経産省が2007年に策定した「IT投資価値評価ガイドライン(試行版)」をメモしておきます。
経産省・・・と言っても、実際のガイドラインは、JUAS(日本情報システム・ユーザー協会)が作成しているので、「JUASのガイドライン」と言う方が妥当なのかもしれませんが(^^;


このガイドラインは、「IT投資価値評価に関する調査研究」の結果をガイドラインとして纏められたもので、IT投資マネジメントの一連のプロセスの中で特に「ITの投資価値をどのように評価するか?」という点にフォーカスした内容となっています。

ガイドラインは4部で構成されており、内容を簡単に説明すると・・・

  1. 経営におけるIT 投資マネジメント
    →簡易チェックリストを中心とした「経営におけるIT 投資マネジメントの有り方」の説明
  2. プロジェクトにおけるIT 投資価値の評価
    →IT投資の現状との対比から、チェックリスト形式で事前(企画・実行)/事後の評価ポイントの説明と、各フェーズにおけるIT投資価値の測定方法/評価手法を具体的に解説
  3. .まとめ
    →IT投資評価の難しさと対策、及びIT投資評価推進の注意事項の説明
  4. 参考資料
    →IT 部門長インタビュー、CIO 座談会の結果とユーザー満足度調査の方法等
という感じになると思います。

ガイドラインを通してポイントとなる点をいくつか挙げるとすると、
まず1章に記載されているIT投資に関する下記の問題提起(ガイドラインから引用)は、多くのIT部門関係者にとって耳が痛い話かもしれません。。。orz
企業において、ある目的を持って投資を行えば、その成果は当然問われるはずであるが、IT 投資についての評価は必ずしも実施されているとはいえない状況である。
 「予算令達の承認は上がってくるが、進捗の報告も少ないし、結果の報告はほとんど上がってこない。IT 部門とは不思議な部門だ」
と思っている経営者は多い。また投資案件が起案されてきても、経営者は、その案をどのように考え、判断すれば良いのか悩むことになる。
この状況を打破するためには、、、やはり、このガイドラインが目指すところであるはずの「経営層(≠ITの専門家)にも適切に理解されるIT投資マネジメントの仕組み」が重要ですね(^^)


次に、3章のまとめに記載されているIT投資評価の6つの難しさと対策を引用すると、


  • 費用対効果が見えにくい案件が多い
    →ROI だけでなくKPI、ユーザー満足度、他社比較、投資しないリスク分析など複数の方法で判定する
  • 複合要因による効果の対応が一意的でない
    →最終的には営業利益で判定する
  • 省力化が実現してもその判定が難しい
    →省時間を何に使うのかをあらかじめ決めてその効果を把握する、省力化案件は人事部を入れて確認する
  • インフラ整備は効果が短期的に計算し難い
    →レスポンスタイム、費用、稼働率、スパンメール排除数、ユーザー満足度などKPI を設定し確認する
  • 効果把握のできる人材がいない
    →IT 部門だけでなく、経営企画、システム監査、経理などの専門家を効果把握支援者に任命する
  • 効果を判定するタイミングのとり方が難しい
    →稼動後半年、あるいは1 年後などとあらかじめ決めておく。最終結果でなくてもよい。


この内容を見ると、非常に納得感がある一方で、「分かっているれど、実際にそれを推進することが難しいんだ!」というIT部門関係者の悲痛な声も聞こえてきそうな気がします。
ITIMに関わる実務者としても、上記に対しては「教科書的な答えだけでなく、様々な代替案を併用して解決していく」ことを念頭に置いて取り組みたいと思っています。。。

なお、このガイドラインは、JUASが毎年実施している「企業IT動向調査」との関連が非常に深く、実際のユーザー企業の調査結果に基づくため、他のガイドラインと比べても非常に実践的な内容となっていると言えます。
ガイドラインに記載されている調査結果は2007年度のデータですが、2008年度以降も「企業IT動向調査」の調査結果は参照できるので、その点も有用ですね。
一方、残念なのは・・・このガイドラインはその名の通り「試行版」であり、本来は2008年度以降にベンチマーク情報等の情報公開が進められ、第一版が制定されるはず?だったのですが、その後の動きが分からないことですね。
多くの企業で、「試行版」という名の付くガイドラインを採用することには、躊躇するケースもあるはずですし、試行版策定から3年以上が経過しているので、そろそろ。。。と思うのは私だけではないはず???

どなたか、今後の制定化の動きをご存じの方がいらっしゃれば、是非教えて下さいm(_ _)m


最後に、今回は意図的に?最も実践的な2章のポイント説明を省略しました。
理由は・・・長くなるから(^^;
非常に参考になる数値データもあるので、別途続編を書きたいと思っていますので、ご容赦下さいー。

2010年9月20日月曜日

最近の気付き。。。

このBlogの一番人気?となっている「JIPDECの「IT投資マネジメントガイドライン」について、Google Analyticsを見てみると、「JIPDEC ガイドライン」という2つのキーワードでアクセスしているヒトがかなり多いことに気付きました。

「IT投資マネジメントの知名度も高まっているんだなー」と勝手に解釈して喜んでいたら、JIPDECの「個人情報保護ガイドライン」が第二版に改定されてますね。。。(^^;
検索結果からこのBlogを訪れた方、ゴメンナサイ。このBlogで紹介しているのは、JIPDECの「IT投資マネジメントガイドライン」です(^^)

IT投資マネジメント分野のメモ+備忘録として始めたこのBlogも、同僚・知人を中心に多くの方に支えられ、気がつけば予想以上のPV数、ユニークユーザー数になっていることが分かりました。
自分だけのメモなら途中で挫折してたかも?と思うと、改めてこのBlogを見てくれている方々に感謝、感謝です。本当にありがとうございますm(_ _)m

ということで今回は、私の周囲の人達とのITIMに関するコミュニケーションを通して気付いたことについて、少しご紹介したいと思います。


まず、初めに以前お仕事をご一緒していたクライアントから、聞いたこと。。。
会社として数年間に渡ってIT投資マネジメントに取り組んでいると、評価のフレームそのものの再考が必要になってくる。
制度疲労という訳ではないが、数年前に設定した投資効果の測定方法、評価基準を、現在開発中のシステムに対して適用するのは適切なアプローチとは思えない。
但し、継続性を重視すると測定方法、評価基準の見直しは難しく、また変更することによる関係者への影響も少なくないから・・・悩ましい。 

当前と言ってしまえばそれまでの話ですが、クライアントの切実な声として聞くと、改めて「ITIMフレームワークの変化対応の重要性」を考えさせられました。
詳しい顧客事情はここでは書けませんが、7年くらい前からITIMを推進されている大手企業ですから、机上論的な「定期的に見直すべき」というアドバイスだけでは、対応できませんよね。
ITIMのフレームワークを策定する際に、「如何に変化対応をプロセスとして組み込んでおくか」が、非常に重要だということを改めて気付かされました。

次に、私の前職のコンサルティングファームの先輩から、聞いたこと。。。

クライアントの業務部門(ユーザ・営業等)はPL(経費)ベースで考えているが、システム部門は、BSも意識しなければならず、やはりROIが必要。
業務部門の施策がキャンペーン・企画的なものだともう大変で、単発のものだと完全に負の資産。

ROIの測定は難しい・・・という話題の中で聞いた言葉ですが、「確かに!」と思いました。
前職時代にITサービス事業者(当時はxSP事業者、今となってはXaaS事業者?)のクライアントを数年間担当していた(良否の側面がある内情を見てきた)ので、「クラウドが常にBest」と思っている訳ではありませんが、システム部門がBSを意識しなければ、、、という点には非常に共感できましたし、対話の相手次第でROIの捉え方/説明の仕方を考慮しておく必要があると改めて気付かされました(仕事柄?TPOはわきまえているつもりでしたが、マダマダですね)。
但し、現実問題としてBSを意識できているシステム部門は、(少なくとも私のクライアントには)多くなかったのが実情と思います。

最後に、私の前々職の通信キャリア時代の同僚&友人から、聞いたこと。。。
ブログ見ました。
住む世界が違い過ぎて良く分かりませんが、日本語ですか?

・・・
・・・・
・・・・・
私は良き友人に恵まれていて、本当に幸せです(^^)

もっと分かりやすい表現でないと、「伝わらない」という励ましですよね???
頑張りたいと思います。

2010年9月13日月曜日

Microsoft Project Server その2

前回このBlogで「MicrosoftのProject Server 2010」を紹介した時点では、MSの国内サイトに限定的な情報しか公開されていませんでしたが、気がつけば・・・ちゃんとした製品情報サイトが出来ていました(^^;


具体的な機能説明になるとUSサイトに飛ばされるのは相変わらず?で、ちょっと残念な気もしますが、新機能の説明、旧Verとの比較等、製品機能が簡単に把握できるようになった点は良いですね(製品情報サイトなんだから当然か???)。

今回新たに分かった情報の中で特に興味深かったのは、PWA(Project Web App)と呼ばれるWebベースのUIで、PWAの機能範囲には下記のPPM(Project Portfolio Management)機能も含まれているので、ちょっとだけ紹介。
  • 需要管理機能
  • ポートフォリオ分析機能
  • トップダウンサマリー機能

PWAの詳細は、コチラから。
PWAはスケジュール機能面でも単体のProject製品の7割くらい?をカバーしてますし、SPSとの親和性も高いことは大きなアドバンテージになると思っています。
操作性という観点で、リボン・インターフェースの賛否?はあると思いますが、複数のプロジェクト(スケジュール)を横断的にチェックして直接変更管理できる点は、PMにとっては有効でしょうね。

と、ここまで書き進めてきてから、PWAの詳細説明サイトを見つけました(^^;
様々な利用者視点(ポートフォリオ管理者、PM、メンバー)での使い方や、ビデオ紹介があります。


この情報への辿りつき方の難しさ?と、何故「サポート→ヘルプ」の下に纏められているのかは謎ですが、ビデオへのアクセス数を見る限り、現時点ではこの情報に辿りついた方は少ないようです。(私は3番目のアクセスでした・・・)
製品情報サイトのトップにUSのデモサイトへのリンクを作るくらいなら、この情報をリンクしてくれた方が、多くのユーザにとってメリットがあるのでは・・・と感じるのは私だけなのか???


該当サイトのビデオ紹介を見て気付いたのですが、PWAのポートフォリオ分析機能では、ビジネスドライバー設定、影響評価から有効フロンティア(効率的フロンティア)を導くことも可能で、予想以上にPPM機能は使いやすい(多機能ではないけれど、割り切って実装されている?)印象を受けます。













出典:Project Web App を活用する(Microsoft)


ちなみに、「Project Server 2010をもっと知りたい!」という方は、ちょっと頑張れば?下記サイトで具体的な画面、仮想サーバ上で操作イメージも把握できます。英語のみですが。。。orz

このように機能視点で捉えていくと、「Project Server 2010はアリだなー」という話になるのですが…一方で考慮事項も当然あります。

Project Serverを活用する上での一番の壁はプロジェクトのリーダー、サブリーダー全員がMS Projectを使って業務を管理し続けなければ意味がない。。。という根本的な課題部分になると考えています。

以前、私が所属していたコンサルティングファームでも、WBSやリソース計画作成等のプロジェクトの初期段階でベースとなるツールはMS Projectでしたが、設計・構築フェーズに入ってくると、リーダークラス全員が該当ツールを使いこなしていたか?という点には、疑問が残ります。

また、私がアカウントしてきた大手ユーザー企業のクライアントにおいても、プロジェクト管理にMS Projectを使う企業は多くは無く、「Excel文化」も根強いので(^^;


話が二転三転してあれこれと書きましたが、今回のポイントを纏めると・・・
  • Project Server 2010ではPWAと呼ばれるWebベースのUIが新たにリリース
  • PWAではPPMの各種機能が利用でき、かつ予想以上に使いやすい(多機能ではないけれど、割り切ってシンプルに実装されている)
  • Microsoftのリンク情報は相当分かり難いが、充実した情報が公開され始めている
  • 但し、Project Serverは関係者全員が活用しなければ効果を得にくいという根本課題がある

という4つになりますね。

前回の記事にも書きましたが、「SPSの発展形としてProject Server 2010という選択肢」をMicrosoft自身が強くPRをし始めたことは、ITIM、PPM市場の認知度向上としては望ましいことですね(^^)


2010年9月6日月曜日

PPM製品の動向&市場

先月2日に「PPM製品の注目度が高まっている?」という記事でスタートしたこのBlogも、気が付けば早1ヶ月。。。ということで、今回はPPM製品の動向及び市場について触れたいと思います。

まず、PPM製品の動向についてですが・・・残念ながら動向を「語れる」程、PPM製品に精通していないので、外部の公開情報をベースに「知っていることを纏めて」おきます(^^;

但し、私の知っている限り国内では、Gartner Japan、IDC Japan等の主要なリサーチ会社でさえ、PPMに特化した製品動向のレポーティングはしていません(IDC Japanではエンタープライズアプリケーション市場のエンタープライズリソースマネジメント(ERM)分野として、部分的には扱われていますが)。


つまり、PPM製品は国内市場における認知度は非常に低いということになりますね(いや、前向きに「これから伸びる余地が大きい!」と言うべきか?)。
そんなことを悶々と考えながら、見つけたサイトがコチラ↓。


このサイトでは、ポートフォリオ・マネジメントについての欧米での利用方法の進化・拡大が分かりやすく纏められていますが、実際のところ国内ではどうなんでしょう?
恐らく多くの国内企業にとっては、欧米の2002年頃の利用方法でさえ自信を持ってできていると断言できるところは少ない気がします(--;

次に、主力製品の市場におけるポジショニングですが、上記同様に国内のデータは見つけられない(存在しない???)ので、Gartnerのレポート(Magic Quadrant for IT Project & Portfolio Management)から一部を引用させて頂くと、、、
Figure 1.Magic Quadrant for IT Project and Portfolio Management
出典:Magic Quadrant for IT Project & Portfolio Management, 2010(Gartner) 

出典:Magic Quadrant for IT Project & Portfolio Management ,2009(Gartner) 

上記のマジック・クアドランド(Gartnerの市場分析)の2009年版と2010年版を見比べた中で、個人的に注目すべきと感じた点は、

  • リーダー企業は6社だが、事実上は4強(CA/PlanView/HP/Compuware)+1(Microsoft)に変化
    →国内では、未販売のPlanViewを除く4社がリーダー企業候補?
  • リーダー/チャレンジャー/ビジョナリーの各企業数は変わらないが、ニッチ企業数は3社(2009年)⇒15社(2010年)に急拡大
    →ターゲットを絞ったPPM製品は大幅増加、PPM市場の注目度は高まる一方?
  • チャレンジャー、ビジョナリーの各企業の中にはグローバルでは有名でも、国内では製品を投入していない企業も多い
    →海外の製品ベンダーからも国内のPPM市場は、マダマダと見られている???

という3つが挙げられると思います。
欧米ではPPM製品が普及・拡大している中、国内でPPM製品が普及しない原因は、様々なものが挙げられると思いますが、文章が長くなってきたのでその話はまた今度(^^)