2011年7月19日火曜日

「インタンジブル・アセット」を読んで

今回は、久しぶり?の書籍コメントです。
Booklog本棚に登録している通り、IT投資マネジメントの関連文献はちょこちょこと読んでいるのですが、今回の本ほど「なるほど!」と「難しい・・・orz」が混在している本は珍しいかも?ということで、一部を引用しながらご紹介したいと思います(^^;

インタンジブル・アセット―「IT投資と生産性」相関の原理インタンジブル・アセット―「IT投資と生産性」相関の原理
エリック ブリニョルフソン Erik Brynjolfsson

ダイヤモンド社 2004-05
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2004年に書かれた本なので、事例(モデルケース)には古さが残りますし、複数の論文の組合せで構成されているため非常に難解な文章、数式も少なからず出てきますが、それらを差し引いても読む価値がある(重要な示唆がある)本だと思います。

まず初めに、インタンジブル・アセットとは・・・「(企業の情報化による生産性向上に寄与する)人材やノウハウのような目に見えない資産」のことを指していますが、

序章で触れられているロバート・ソローの「生産性パラドックス」の通念(コンピューター時代の到来はいたるところで感じることはできるが、生産性統計には表れていない)に対する2つのメッセージが、シンプルで共感が持てます(^^)

  • 「コンピューターへの投資効果がゼロだという仮説は排除できない。しかしその一方で、標準誤差が大きいからといって、投資効果がかなり大きいという仮説を排除することもできない」
  • 「証拠の不足は、不足の証拠にはならない」


そして、インタンジブル・アセットの重要性を証明するための?投資への考察が興味深いです。

  • 業績が良く最も企業価値が高い企業は、IT投資額が多く、さらに組織的資本への投資額はそうでない企業の10倍にも上っていた。
  • つまり成功した企業はIT(ハードウェアおよびソフトウェア)へ1ドル投資するごとに、業務慣行を支援するために10ドル投資したことになる。


次に、「高生産性企業の七つの原則」については、この部分だけを読むと当り前のコトを書いているように感じましたが、本書を一通り読み終えた後に振り返ってみると、「確かに。。。」と納得できる部分が多いと思います。(以下は、省略した形の引用文です)

  1. (テクノロジーの導入に際しては)アナログからデジタルの業務プロセスに移行すること
  2. 意思決定責任と決定権を分散すること
  3. 社内の情報アクセスを促進し、コミュニケーションを活発にすること
  4. 年功序列ではなく、個人の業績に基づいた給与体系とする(報奨制度とリンクさせる)こと
  5. 事業目的を絞り込み、組織の目標を共有すること
  6. 最高の人材を採用すること
  7. 人的資本に投資する(教育や研修に費用と時間をかける)こと

「デジタル化による事業変革の原則」については、特定の手法によることの是非だったり、今となっては・・・という部分もありますが、例えば「インターネット」→「ネットワーク」と読み替えると、納得感は高まりますね。
  1. 情報技術だけでは十分ではない。デジタル事業には、製品情報の提供や製品・サービスの注文などのウェブサイトの構築や基本的機能の導入以外に実施すべきことが多数ある。
  2. マトリックス・オブ・チェンジを活用して、自社の業務形態の相互補完精について理解する
  3. 補完的試算を現行の事業システムから目標の事業システムへの移行に活用するためにインターネットを利用する
  4. 企業と経営者は、ただ他社の業務形態を模倣するのではなく、事業を発案(または再発案)するつもりで取り組む必要がある

表現が全般的に難しい本なので、完全に理解するには今の私では力不足な気もしますが、著者が言わんとすることは、何となく?理解できたと思います。

要は、「IT化投資で生産性を向上するためには、直接的なIT化への投資だけでなく、スキル、組織構造・プロセス、企業文化等の目に見えない資産の価値を高める投資が重要」ということですね(^^)

今まで、経験則の延長であったり、主観的な主張としてこのような話を耳にするコトはありましたが、膨大なデータ、様々な事例からロジカルに論証しているところが、MITの著名な教授の著書ならでは。。。という気がします。

気軽には読みにくい本ですが、過去の事例の勉強も兼ねて・・・興味がある方は是非!
この本を読んで、私もちょっとだけ賢くなれた気がします(^^;

最後に・・・本書ではIT投資の中でも特に「生産性向上とインタンジブル・アセットの関係性」に焦点が絞られていますが、「資産」という概念はクラウドの活用、IFRSへの適合等を踏まえた今後のIT投資マネジメントを考える上でも重要なKeywordになると考えられています。
その話は、また今後どこかでしっかりと触れたいと思います(^^)v

2011年7月7日木曜日

初めての学会で学んだコト

今日は七夕ですね。綺麗な夜空が見たかったなぁ。。。
七夕には何ら関係ありませんが、先週末に人生初の学会に参加したので、今回はそこで学んだコト、感じたコトについて、少しご紹介したいと思います。


日頃からお世話になっている武蔵大学の松島先生のご紹介により、学生時代にも参加したことのない「学会」に初めて参加したのですが、良い意味での驚きが数多くあり、思いもしないほど貴重な経験を積むことができました!


実は・・・開催場所は私の母校だったのですが、、、
何せキャンパスに足を踏み込むのも卒業以来(何年前だ???)という程、学術分野とは縁遠く過ごしてきたため、参加する前までの学会のイメージは、「象牙の塔」に限りなく近かったのですが、
実際は学術関係者に閉ざされた場所ではなく、多くの企業人・実務家にとっても非常に有用な場だと感じました。



IT投資マネジメントの話ではありませんが、私が驚いたコト、多くの実務家の方に共有したいコトを3つ挙げると・・・
  1. 実務に近いテーマも数多く研究されている
    →全ての研究が・・・とは言いませんが、企業内の戦略立案に役立つ研究、サービス企画や運営に直ぐに活かせそうな研究が、数多くありました。
  2. 社会的地位のある先生方が、非常にフランクに接してくれる
    →私も若くは無いものの・・・著名な学会だけあって参加者の多くは教授、准教授という肩書きを持つ年配の方が中心でしたが、発表時の質問には丁寧に答えてくれるし、懇親会の席でも物腰柔らかで、人間的に魅力ある方が圧倒的に多かったです。
  3. 発表者のプレゼンが、驚くほど上手い!!!
    →正直なところ、学術関係者の方がプレゼンをするイメージはあまり無かったのですが、本当にプレゼン上手な方が多くて、「人前で話すのは得意かも」と勘違い?していた自分が恥ずかしくなりました。。。ホントに。

ここまで読んでくれた方の中には「何のPRだ?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、純粋に企業の実務家も、もっと学会に参加して勉強すべき。。。と実務家の一人として強く感じました。
しかも、参加費用を考えても、微妙なIT系のセミナーに比べて圧倒的に有意義だなーと(^^;


ちなみに、私が参加させて頂いた発表は下記でした。
  • 7/3(日)13:00~ IT投資マネジメントの変革
    →もし、発表された論文に興味がある方は、個別に連絡下さい。
    関係者に確認した上で、ご案内します。

松島先生が発表者兼司会者を務めながら、他の先生方との合同で約2時間の発表、意見交換(議論)という流れのセッションでしたが、多くの人から質疑の声が上がり、非常に活発な議論であったと思います。
#強いて問題を挙げるとすれば、私が緊張のあまり上手くしゃべれなかったことぐらい。。。(>_<)


今回は、知識の面で多くのことを学べたことは勿論のこと、モチベーションという面でも良い刺激を受けましたし、そして何より人との出会い、意見交換ができたことは「Priceless」だなーと、強く感じた2日間でした。

私の会社の活動コンセプトの一つに「つなぐ」というKeywordがあるのですが、「研究」と「実務」をつなぐ存在になりたいなーとの思いが強くなりました(^^)v

最後に、貴重な機会を下さった松島先生、及び懇親会で若輩者の意見に耳を傾けてくれたITIM研究会の皆さん、本当にありがとうございましたm(_ _)m