2013年6月29日土曜日

プログラムマネジメントの重要性

藤原です。
今回は、プログラムマネジメントとIT投資管理の関連性について、少し触れたいと思います。「プロジェクト」ではなく「プログラム」マネジメントの話です。


プログラム、プログラムマネジメントとは?

プログラムとは、企業の戦略目標達成に向けた価値を創造するための”複数”の施策(プロジェクト)によって構成される統合的な活動を指す概念で、そのプログラムに構成される複数のプロジェクト群を管理するプロセスや手法をプログラムマネジメントといいます。
プログラムは、各プロジェクト活動の上位に位置し、横断的な管理活動を行うことで、目標達成に寄与する価値を生み出すことを目的としています

プログラムマネジメントに関する標準やベストプラクティスは、日本や米国、英国から発行されています。


『P2M標準』(PMAJ)ではプログラムを
「自組織の、または顧客から所与の、組織戦略具現化のための上位レベルの特定使命(プログラム特定使命)を実施する複数のプロジェクトが有機的に結合された単位事業」
とし、プログラムマネジメントを
「外部環境の変化に柔軟に対応しつつ、組織の資源と遂行能力を効率よく活用しながら、複数の要素プロジェクト間の全体最適統合を行い、プログラム特定使命を達成するマネジメント手法」
と定義しています。

また、『PGM標準』(PMI)ではプログラムを
「プロジェクトを個々にマネジメントすることでは得られないベネフィットとコントロールを実現するために、調和のとれた方法でマネジメントされる相互に関連するプロジェクトのグループ」
とし、プログラムマネジメントは、
「プログラムの要求や、プロジェクトを個々にマネジメントすることでは得られないベネフィットとコントロールを実現するための知識、スキル、ツール、テクニックの運用」 

と定義しています。


プログラムマネジメントの価値

プログラムは、単に複数のプロジェクトを束ねた総称ではありません。
企業の戦略目標を達成するために必要な価値を産み出すための施策(活動)として「プログラム」が定義され、そのプログラムが複数のコンポーネント(プロジェクト)によって構成されている、という構図となります。
従って、プログラムはプロジェクトの上位に位置し、一連のプロジェクト成果によって、戦略目標達成に寄与する価値を創造することをゴールとしています。

私は、プログラムマネジメントの価値として、以下が挙げられると思っています。

  • 戦略目標達成に求める価値とプロジェクト成果の整合性(トレーサビリティの確保)
  • 統合的なリソース管理やリスク管理による個々のプロジェクト品質の向上
  • 目標達成に対する責任(プログラムサイフサイクルを通して効果を測定・評価)

膨大な費用を投入したプロジェクトでも、QCDを満たして成果物を作り出せば成功!という訳ではなく、その根本には、達成すべき戦略目標があるという認識を持つことは、メンバーのプロジェクト実行に携わる意義を明確にします。
また、見落とされがちなプロジェクトの事後評価に関しても、プログラムマネジメントは、投資対効果をモニタリングする役割を担うことで、戦略目標達成に対する責任を果たします。


IT投資管理との関連性

プログラムは、企業のIT投資(またはIT資産の活用)によって戦略目標達成への価値を創造する一連の企業活動(関連する複数のプロジェクト群)と位置付けられます。そのため、プログラムマネジメントには、重要なタスクとして財務的な管理活動が含まれます。

企業におけるIT投資に対して、プログラムとして必要な全体額を要求(調達)し、各々のプロジェクトに適切に配分します。また、個々のプロジェクト状況を逐次モニタリングし、プロジェクト実行中、及び事後においても、その効果や価値を評価することで、リソースの調整を行います。
つまり、プログラムマネジメントは、プログラムのライフサイクルを通じて、投資に対する成果・価値の評価を行い、適宜そのコントロールを実施することが求められます。

プログラムマネジメントは、IT投資管理としての機能を部分的にではありますが、担っていると言えると思います。


最後に・・・
デスマーチと呼ばれる様々なプロジェクトと、それをコントロールする「プロジェクトマネジメント」の重要性、難易度は多くの実務者に認識されていますが、「プログラムマネジメント」に関しては、まだ十分に認識されていないかもしれません。

企業が求める変革(イノベーション)を達成するためには、非常に複雑で、難易度の高いプロジェクトの遂行が不可欠であり、それらのプロジェクト群が成功するためには、統合的なモニタリングとリソースやリスクのコントロールにより、環境変化に対して柔軟に対応するプログラムマネジメントが重要であると考えます。

今後、個々のプロジェクトの統合的な管理・成功に向けた活動という直接的な視点だけではなく、IT投資に対する効果(価値創造)をより高めるための活動という視点でも、「プログラムマネジメント」が、更に浸透していくことを期待します。