2013年12月30日月曜日

2013年の振返り

河田です。
早いもので今年も残すところ、あと僅かとなりました。

今年は、2020年東京五輪の誘致決定や、富士山の世界遺産の認定、
また日本経済の緩やかな回復等、社会的に喜ばしい出来事も多くあり
ましたが、皆さんにとって、2013年はどのような1年だったでしょうか?

個人的には、
共著者として携わらせて頂いた「IT投資マネジメントの変革」が出版され、
IT資産価値研究会」を有志で立ちあげたり、
(ここでは書けませんが)仕事上でとても貴重な経験をしたり・・・と、
IT投資マネジメント活動の一つの節目となる一年だったように感じています。

実はこのブログにおいても、4月から投稿者の体制を強化し、
投稿テーマも狭義のIT投資管理から、
プロジェクトマネジメント、プログラムマネジメント、IT資産管理等も含めた
広義のIT投資マネジメントへと試行錯誤してきました。

今回はその取組みの振返りも兼ねて、簡単にご紹介したいと思います。

振返りには、毎年恒例の?Google Analyticsの統計データに加えて、
今年から始めたSlideShareのデータも一部使ってみました。

まず、初めにGoogle Analyticsで全体傾向を見ると・・・
投稿数が変わらない中で、訪問者、ユーザー数、ページビュー共に増加
しているので、取組みにより一定の効果が得られていると思います。

  • 訪問者は約2割増加(3,813人→4,586人)
  • ユーザー数は約3割増加(2,769人→3,570人) 
  • ページビューは約15%増(6,433PV→7,402PV)


次に、参照元(ソースメディア)を見てみると・・・
このサイトへのアクセスの多くは、「検索エンジン経由」であることが分かります。
  • Googleからの検索結果が一番多い(約65%)
  • Yahoo、Bingを合わせると、参照元の約8割超が検索エンジン


検索キーワードについては・・・
昨年とキーワード、傾向自体に大きな変化はありませんが、キーワード次第で
滞在率にかなり差が出ている
ことが分かります。
  • 「IT投資マネジメント」、「ガイドライン」、「アプリケーション・ポートフォリオ」、
    「IT投資管理」が主なキーワード
  • 「ポートフォリオ」の関連ワードが上位10件の4件を占める
  • 「IT投資マネジメント」で検索した人の滞在率は4分を超える



閲覧ページについては・・・

昨年と基本的なパターンは変わらず、実践的なコンテンツへのアクセスが多いこと、
また、プログラムマネジメント、IT資産価値等の新しいテーマに対しても相当数の
アク
セスがあることも分かります。
また、作成時期(コンテンツの目新しさ)はあまり関係ないことが分かります。



続けて、SlideShareへのアクセスを見てみると・・・
こちらもより実践的、実務的なコンテンツの方が、アクセス数が多いことが分かります。


SlideShareについてはレコメンドによる流入がかなり多いと想定され、また有料の
ユーザー分析も使っていないので、概要の傾向しか把握できませんが、傾向と
いう意味ではGoogleAnalyticsの統計と類似していると言えそうです。


振り返ってみると・・・
年間の訪問者数が昨年に比べて増加していること、
プログラムマネジメント、IT資産価値等の新たなテーマへのアクセスが相当数あること、
GoogleだけでなくSlideShareでも同様の傾向が見えること
から、継続的な取組みだけでなく、新たな取組みについても一定の成果が得られて
いると思います。

詳しく見れば、、、
直帰率が依然高い状態であったり、滞在時間の短いコンテンツが多いことから、
コンテンツの質の向上は課題と言えますが、
実務者向けのコンテンツへのアクセスが多いことは(実務者の一人として)とても
嬉しく思っています。

改めて、多くの参考情報を提供してくださった諸先輩や、このブログを見てくれた方々、
フィードバックをくださった読者の皆様に深く感謝します。

来年もIT投資マネジメントに関連する分野の皆様にとって、有益な情報を発信できる
よう取り組んでいきたいと思います。
また、このブログの運営から得られた情報を活かして、見える形の仕組みについても
仕事の一環として検討したいと考えています。

それでは、最後まで読んでくれた皆様・・・
よいお年を。
来年もどうぞ宜しくお願いします。

2013年11月30日土曜日

「ITマネジメントの新機軸」(向正道著)を読んで

河田です。
気がつけば、今日で11月も終わり。月日が過ぎるのは本当に早いですね。

研究会でお世話になっている先輩コンサルタントの方から、先日発売されたばかりの
素敵な本を頂きましたので、今回はその本をご紹介します。

経営・事業・ITの三者で進めるITマネジメントの新機軸経営・事業・ITの三者で進めるITマネジメントの新機軸
向 正道 新日鉄住金ソリューションズ

日経BP社 2013-10-17
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この本は、ITコンサルタントという実務家の一面だけではなく、
資源ベース論の研究者としての一面も併せ持つ著者が、
「システム化計画(IT計画)」を中心にITマネジメントのあり方を書かれた本であり、
実務的なテーマを学術的な視点も組み込んでまとめ上げているという点で
非常に貴重な本ではないかと思います。

一般論として、実務家が経験に基づく話を語る場合は、ケースバイケースの偏った
内容になってしまうことも少なくなく、
一方で、研究者の方は時として実務を無視した机上論になっている場合もあるの
ではないかと思いますが、この本はその両面を上手くバランスを取って、セオリーに
基づきながらも地に足のついた話が展開されている本だと感じます。

本の帯に「CIO、情報システム部員必見!」と書かれているのも頷けますね。

発売されたばかりの本なので、具体的な内容は本書を見て欲しいと思いますが、
目次だけご紹介しておくと・・・
第1章 企業における情報システムとその役割
第2章 システム化計画の概要
第3章 経営者視点からのITマネジメント(経営戦略とITの融合)
第4章 事業部門視点からのITマネジメント(ビジネスプロセスと情報)
第5章 情報システム部門視点からのITマネジメント(サービスレベルとコストの最適化)
第6章 IT施策の統合(優先施策と中期ロードマップの作成)
第7章 情報システム部門の組織運営(施策の推進に臨み)
という構成になっています。
各章の終わりには要約があり、頭を整理しながら読み進めることもできます。

IT投資マネジメント、IT投資管理に関して考察するアプローチではないのですが、
システム化計画を通して「IT投資はどのように企業業績を向上させるのか?」
というIT投資のあり方の本質に迫っています。

著者自身が冒頭に書いている通り、所謂ノウハウ本では無いので、目新しさを求める
方にはFITしないかもしれませんが、この分野の仕事に関わる多くの方にとって、
ITマネジメントの全体像が網羅的・体系的にまとめられている点で、非常に示唆に富む
本だと思います。(何度も読み返す価値があります)

私自身、戦略論の経験はまだまだですが・・・あとがきに書かれているシステム化計画が
次の活動につながらないケース(3つの考慮点)は、同じコンサルタントとしてとても共感
できました。
1.報告書の全体感
2.施策の具体性
3.推進責任者が不明確
このキーワードに心当たりのある方は、是非この本を手にとって見て下さい。
日々の多忙な業務の中で、この本を纏めあげた向さん、ホント凄いです。

最後に・・・著者の向さん他、複数企業のコンサルタントの方々、研究者の方々と一緒に、
今年の5月から「IT資産価値研究会」にて研究を深めています。


具体論はこれからですが、
先月の経営情報学会(2013年秋季全国研究発表大会)で
IT資産の価値評価に関するフレームワークの構築
というテーマで共同研究発表もしています。

該当テーマの研究に興味のある方はご一報ください。


2013年10月29日火曜日

プロジェクトの失敗についての考察

中嶋です。
今回はIT投資マネジメントから話がそれてしまいますが、プロジェクトの失敗についての自分なりの考察を書いてみようと思います。


先日、こんな記事がITproで掲載されていました。

 ITpro:なぜプロジェクトマネジメントは機能しないのか

「プロジェクトの成功率は3割にも満たない」と言われ続けていますが、こういった記事を見ると、如何にプロジェクトを成功させることが困難であるかを改めて感じます。昔と違って、マネジメント系の教育も充実していますし、プロジェクトマネジメントやPMPといったマネジメント系の資格取得者も増えているというのに何故改善しないんでしょう?

色々な理由があってプロジェクトは失敗してしまうわけですが、根本原因は以下2つではないかと私は考えています。
 1.スコープが定義出来ていない
 2.プロジェクトの振り返りをしっかり行っていない
以下で、それぞれについて意見を述べたいと思います。

1.スコープが定義出来ていない
これは、見積が甘かったという声を取り上げたものです。要件(機能・非機能)、要員、コスト・・・色々あるとは思いますが、いずれもスコープが正しく定義出来なかったから起こる事象です。
では、スコープは要件定義段階で明確に定義出来るものなのでしょうか?答えはNoだと思います。ITプロジェクトの成果物が目に見えないという性質上、最終的なイメージを付けづらいからです。そのため、後から後から要望が増え収集がつかなくなったり、そもそも思っていたものと違うものが出来上がって使われないといった事態に陥ってしまいます。

個人的には「大枠のスコープを定義」して、後はお客様との認識ギャップを減らす取り組みを続けたり、発生する可能性のある変更を予め洗い出して共有しておくことが効果的だと思います。

前者は、プロト開発やイテレーション開発、簡単なところではお客様とのコミュニケーションを増やすといったことが考えられます。少しずつ成果物が見えてくれば、お客様のイメージもより具体的になりますし、コミュニケーションを増やすだけでも認識ギャップは大幅に減らせます。特に開発フェーズ等、請負期間中は移行やユーザーテスト、ユーザー教育の話が中心となってしまい、機能イメージの共有等を行わないことが多いように感じますので、やってみる価値は大いにあると思います。

後者は、リスクマネジメントの実践です。マネジメントは実践しているといっても、リスクマネジメントを正しく実践しているプロジェクトは少ないのではないでしょうか?実際リスク一覧を作っているといっても、書いている内容が具体化されていなかったり、洗い出して満足してしまって運用されていないプロジェクトが多いように感じます。まだ実践されていないのであれば、フェーズの開始終了時点だけでも有識者を集めて、リスク検討してみてはいかがでしょうか?


2.プロジェクトの振り返りをしっかり行っていない
プロジェクトの振り返りを行うことは、ナレッジの共有という意味でも非常に有効であると考えています。冒頭で挙げた記事を引用すると、
プロジェクトとは、
 「やったことがないことを何が起こるか分からないのに、計画して、
  予定通りのモノ(コト)を、期限までつくる(終らせる)こと」
とあるように、分からないことに挑戦することでもあります。プロジェクト推進期間中に、何事も起きないプロジェクトは皆無です。であれば、過去に苦労した情報は貴重で価値のある情報なのですが、あまり共有・活用されない傾向にあります。
それもそのはずで、振り返りはプロジェクト期間外(終了後)に行われることが多く、実践したとしても主要メンバーが別プロジェクトに参画してしまい、なかなか本質を突いた振り返りが出来ていないからです。
これを防ぐためにも、フェーズの切れ目で振り返りを行うことをオススメします。私の参画していたプロジェクトではありませんが、フェーズの切れ目で振り返りを行い、プロジェクトの終了後に総合的な振り返りを行うことで、本質を突いた意見や改善提案が多く挙がっていたように感じます。言いづらいことを言いやすくしてもらうために、匿名性で問題点・改善点を挙げてもらうといったプロジェクトもありました。とにかく後に続く貴重な情報を吸い上げられる仕組みを作ることが大切です。

振り返りの後は、整理した内容をノウハウとして一元管理する仕組みを作り、簡単に検索・閲覧出来る仕組みがあると良いですね。集めたナレッジを分析した結果、同じような問題にぶつかったプロジェクトが多ければ、プロジェクト参画者で集まって分科会を開き、改善策を深掘りするのも良いでしょう。



長々と書いてしまいましたが、今回はこの辺で。少しでも多くのプロジェクトが成功するよう、またメンバーが楽しくプロジェクトを進めることが出来るよう、自分自身も精進していけたらと思います。

2013年9月28日土曜日

アジャイル開発とIT投資について

藤原です。
今回は、「アジャイル開発」をテーマに、関連するトピックとIT投資の観点から見た価値について述べたいと思います。


アジャイル開発とは
ソフトウェア開発において従来より広く採用されていたウォーターフォール型開発は、求められる全て機能の実装を最終的なゴールとして、「要件定義」「設計」「実装」「テスト」の流れを順序通りに進めるアプローチ(計画重視)であるのに対し、
アジャイル開発は、小さな機能レベルで動作するソフトウェアをリリースし、各種要件や環境変化に応じて、イテレーション(反復)による開発を繰り返すことで機能を成熟させていくアプローチ(変化対応重視)の開発手法です。

アジャイル開発は、ソフトウェア開発自体を円滑に実施することに着目するのではなく、可能な限り早い期間で動作可能な機能を提供し、環境変化にも対応すべく、機能を変化・拡充していくことで、開発されたソフトウェアがもたらす価値を最大化する点に着目する点が特徴と言えます。


アジャイル開発の現状
先日、MPFU(Microsoft Project Users Forum)主催のセミナー『アジャイル開発の現状と「プラクティス・リファレンスガイド」』に参加した際、アジャイル開発を取り巻く現状を伺いました。
紹介されていた内容をかいつまんで要約すると
  • 海外で多く普及されており、日本国内でも年々増加傾向にある
  • アジャイル開発の適用に関して親和性の高い領域
    • ビジネス要求が変化する領域
    • リスクが高い領域(市場/技術リスク)
    • 市場競争領域
  • 逆にチャレンジや創意工夫が必要(困難)な領域
    • 大規模開発
    • 分散拠点開発
    • 組織間をまたぐ開発チームによる開発
    • 組み込みシステム開発
  • アジャイル開発はW/F型開発に比べ、技術者の満足度(モチベーション)が高い
  • ジャイル開発の様々な事例と具体的な実践方法のリファレンスをまとめた「リファレンスガイド」がIPA/SECから発行されている

アジャイル開発は、多くの企業で採用・実践され、確実に普及していると言えます。
近年、ビジネス環境の変化に伴いスピードが求められる中、その有効性についても、開発者と利用者の双方から認識されていると考えられます。
ただ、依然として、基幹システム等の大規模なソフトウェア開発においては、実践する上での工夫が必要である点や、ベンダーとの業務委託等の契約スキーム等、検討すべき課題はあるのが現状のようです。


アジャイル開発と要求分析(ビジネスアナリシス)
「要件が曖昧だと開発が進められない」
従来のウォーターフォール型開発では、こうした要求定義の重要性が問われるケースが多く聞かれますが、アジャイル開発の場合はどうでしょうか?

アジャイル開発においても、同様に要求分析は重要と言えます。
イテレーションを繰り返す中で、実装されていく機能が、ビジネス上の目標を達成するための要求と整合が取れているか、常に要求分析を行う必要があります。

以前、本ブログでも紹介した要求分析に関する知識体系であるBABOK(Business Analysis Body of Knowledge)においても、アジャイル開発におけるビジネスアナリシス活動のプラクティスをまとめた拡張版「Agile Extension to the BABOK」が2013年7月に公開されました。

BABOKのアジャイル拡張版には、各種アジャイル手法(XP、Scrum、Kanban)におけるビジネスアナリシスの役割や責任、実務上のテクニック等がまとめられています。
#アジャイル拡張版の詳細は、また別の機会にご紹介したいと思います。

こうした動向からも、開発手法としてのアジャイル開発の普及、有効性に関する認識の高まりを感じることができます。


IT投資の観点から見たアジャイル開発の価値
IT投資の観点から、アジャイルによるソフトウェア開発は大きなメリットがあると言えます。私は、アジャイル開発の価値として、以下が挙げられると思っています。

  • 短期間で動作するソフトウェア(機能)をリリースすることで、投資対効果を早期に実現できる
  • イテレーションによって機能を変化・拡充することで、投資価値を最大化できる
  • ビジネス環境の変化に対応すべく、機能実装を通じて投資をコントロールできる

SaaS、PaaS等のクラウドサービスが成熟していく中、ソフトウェア開発自体の在り方も変化している現状からすれば、ビジネスをとりまく環境変化に柔軟に対応でき、投資効果を早期に実現可能な手法が普及するのは当然と言えるかもしれません。
ただ、開発するソフトウェア(機能)の安定稼働の実現、戦略目標達成に向けた価値を十分に発揮するまでに、どれだけイテレーションを繰り返すか、投資をかけるべきなのかについては判断が必要な部分と言えます。

アジャイル開発においても、ソフトウェアのライフサイクルを意識したIT投資管理が重要だと思います。



2013年8月30日金曜日

IT資産価値の多面的な評価の枠組み

河田です。
最近は実務者に役立つ情報よりも活動報告的な話が多いような気もしますが、今月上旬に浜名湖フォーラム(通称:カリアック会議)に参加しましたので、今回はそこで発表したIT資産の価値についての話を少しご紹介します。

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カリアック会議については、昨年9月にもこのBlog上で紹介していますが
  • 経営情報学会の「中小企業のIT経営研究部会」
  • 武蔵大学の「松島教授オープンゼミ」
  • ITコーディネータ協会の「IT経営研究所」
3者合同の研究合宿で、様々な分野の専門家、有識者、経営者の方々が集まり、肩書きや立場に関係なく議論するというオープンな形式のフォーラムでもあります。

浜名湖畔のカリアック(商工会議所研修センター)で開催されてきたこと、また「IT業界のダボス会議を目指す!」という高い志から命名されたとも言われています。

私は、今年度から新たに取り組んでいるIT資産価値研究会のメンバーの一人として、「IT資産価値の多面的な評価の枠組み」について、発表しました。



昨年度の発表「ソフトウェア資産管理とIT投資マネジメントの関係性」の発展形の話ですが、今回は4人のコンサルタントによる連携プレゼンの一部として「評価の枠組み」というテーマで、下記の3点をキーメッセージとしてお話しています。
  • IT資産価値評価の悩ましさ、難しさを考えると、企業実務で評価・活用するためには、いくつかのバリエーション検討が必要であること
  • 資産価値の評価に際しては、改めて「誰のため?」、「何のため?」から評価の視点/方法を考えることが必要であること
  • 具体的には、IFRS的な視点、事業価値の視点、IT全体ポートフォリオの視点の他に、「知的財産の価値評価」、「企業独自のスコアリング評価」、「システムマップ活用評価」のアプローチが考えられること
私が発表を通して伝えたかった一番のポイントは、
IT資産の価値評価は極めて難しい/悩ましいテーマではあるけれど・・・
稼働するシステムをIT資産として管理することは、「該当システムへのIT投資とその結果もたらされる価値について継続的に向き合う機会」になり得る
という点です。

まだまだ研究途上ですが、IT資産価値の測定方法は、全ての企業で一律であるべきではなく、また目的に応じた使い分けも必要であることを納得感を持って整理できたら良いな・・・と考えています。

システムの価値は、会計的には減価償却的な側面しか認められていませんが、実際には多元的な価値の側面があり、事業に占めるIT投資の割合(IT資産の比率≒業種業態)、ITコストの管理箇所(IT部門/事業部門)、企業規模等により、その意味合いも変わってくるものではないかなと。

今回の発表を通して、多くの有識者の方々から貴重な指摘をもらえたことは、とても有難く、また研究の意義も含めて共感のコメントを数多く頂けたことは、とても嬉しかったです。

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カリアック会議は今回で三回目の参加となりましたが、年々参加者が増え、多岐に渡る興味深いテーマの発表が多くありました。(Agendaはコチラ

主催者の皆さま、IT資産価値研究会の皆さま、そして関係者、聴講者の皆さま、
本当にありがとうございました!!!

最後になりましたが、今年から複数企業のコンサルタントの方々と共に「IT資産価値研究会」を定期的に実施しています。
ゲスト参加も大歓迎ですので、該当テーマに関心がある方は、ご一報下さい。

2013年7月29日月曜日

プロジェクトで活躍するOSSツール

中嶋です。

あっという間に2回目の投稿となりました。月日の経つのは早いものです。
さて今回は、システム開発・運用・保守におけるツール(プロジェクト管理、バージョン管理 etc.)
について、OSSツールを中心に少しご紹介したいと思います。
古くから使われているツールが多いですが、備忘録として投稿させていただきました。

【プロジェクト管理】
 1.Trac
  EdgeWall Softwareで開発されている、プロジェクト管理ツール。
  
  チケットによるタスク管理だけでなく、
  Subversion, Gitといったバージョン管理とも連携や、テスト管理ツールであるTestLinkとの
  連携も可能。

 2.Redmine
  Jean-Philippe Langで開発されている、プロジェクト管理ツール。
  
  Trac同様、チケットでタスク管理しており、
  バージョン管理ツールや、テスト管理ツールとの連携も可能。
  複数プロジェクトで利用することも可能で、プロジェクト間のコミュニケーションも可能です。
  ガントチャートやカレンダー、グラフのようなビューといったプラグインも充実しています。
  
  昔からあるツールですが、ここ数年(2011年以降)Redmineの導入率が高くなってきており、
  MS Projectよりも導入率が高いとのアンケート結果も出たくらいメジャーになってきています。
  
【バージョン管理】
 1.Subversion
  CVSの改良版として開発されたバージョン管理ツール。
 
  リソース編集時に「ロックしない」点が大きな特徴で、
  編集するソースのロックによる待ちによる開発効率の低下を防止。
  その反面、競合が発生することもありますが、それほど苦にならなかったと思います。
 
 2.Git
  オープンソースの分散型のバージョン管理ツール。
  
  リモートサーバ等にあるリポジトリの完全コピーを手元(ローカル環境)に作成して、
  そのローカルリポジトリを使って作業します。
  最近は、SubversionよりもGitが主流になってきているようにも感じます。
 
 
【タスク管理】
 1.SubTask
  マインドマップ形式でタスクを管理するツール。
  
  Web上で編集した内容が、ほぼリアルタイムに参照可能となるので、
  タスクの洗い出し、担当割が簡単に行えます。
  
  メールによるプッシュ機能もあり、
  変更内容の情報共有、期限切れのタスク共有も可能となっています。


また、Redmine, Subversionを連携させて、進捗状況を解析する仕組みも生まれています。
 http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Active/20120827/418343/

管理まではツールで、進捗分析はスクリプトやマクロを組むといったパターンが多かったですが、
こういったツールが充実してくると、本来のマネジメント業務に注力出来るものです。

もちろんツールを導入するだけでなく、使う視点が無いと宝の持ち腐れとなってしまうので、
各フェーズの計画段階で、進捗・対応状況の入力方法、進捗の測定方法、不具合の分析軸を
きちんと整備して定着化させる活動も必要です。

使い方を定義したあとは、実際の利用者(開発者)の負担が低くなるよう、
自動的に情報が登録出来る仕組みも考える必要があると思います。
忙しいシステム開発プロジェクトで、細かい情報を登録していこうとは思わないでしょうし、
登録する項目数(分析軸となる項目)が増えてしまうと、管理工数がかかってしまって、
非効率になりますので。

以前のプロジェクトでは、入力漏れを支援チームでカバーするといった
非常に効率の悪い管理もあったので、自動入力の仕組みが出来ていくことを願っています。
不具合の発生原因も、記載した不具合の内容をテキストマイニングで分析し、
自動的に分類されると良いですね。

2013年6月29日土曜日

プログラムマネジメントの重要性

藤原です。
今回は、プログラムマネジメントとIT投資管理の関連性について、少し触れたいと思います。「プロジェクト」ではなく「プログラム」マネジメントの話です。


プログラム、プログラムマネジメントとは?

プログラムとは、企業の戦略目標達成に向けた価値を創造するための”複数”の施策(プロジェクト)によって構成される統合的な活動を指す概念で、そのプログラムに構成される複数のプロジェクト群を管理するプロセスや手法をプログラムマネジメントといいます。
プログラムは、各プロジェクト活動の上位に位置し、横断的な管理活動を行うことで、目標達成に寄与する価値を生み出すことを目的としています

プログラムマネジメントに関する標準やベストプラクティスは、日本や米国、英国から発行されています。


『P2M標準』(PMAJ)ではプログラムを
「自組織の、または顧客から所与の、組織戦略具現化のための上位レベルの特定使命(プログラム特定使命)を実施する複数のプロジェクトが有機的に結合された単位事業」
とし、プログラムマネジメントを
「外部環境の変化に柔軟に対応しつつ、組織の資源と遂行能力を効率よく活用しながら、複数の要素プロジェクト間の全体最適統合を行い、プログラム特定使命を達成するマネジメント手法」
と定義しています。

また、『PGM標準』(PMI)ではプログラムを
「プロジェクトを個々にマネジメントすることでは得られないベネフィットとコントロールを実現するために、調和のとれた方法でマネジメントされる相互に関連するプロジェクトのグループ」
とし、プログラムマネジメントは、
「プログラムの要求や、プロジェクトを個々にマネジメントすることでは得られないベネフィットとコントロールを実現するための知識、スキル、ツール、テクニックの運用」 

と定義しています。


プログラムマネジメントの価値

プログラムは、単に複数のプロジェクトを束ねた総称ではありません。
企業の戦略目標を達成するために必要な価値を産み出すための施策(活動)として「プログラム」が定義され、そのプログラムが複数のコンポーネント(プロジェクト)によって構成されている、という構図となります。
従って、プログラムはプロジェクトの上位に位置し、一連のプロジェクト成果によって、戦略目標達成に寄与する価値を創造することをゴールとしています。

私は、プログラムマネジメントの価値として、以下が挙げられると思っています。

  • 戦略目標達成に求める価値とプロジェクト成果の整合性(トレーサビリティの確保)
  • 統合的なリソース管理やリスク管理による個々のプロジェクト品質の向上
  • 目標達成に対する責任(プログラムサイフサイクルを通して効果を測定・評価)

膨大な費用を投入したプロジェクトでも、QCDを満たして成果物を作り出せば成功!という訳ではなく、その根本には、達成すべき戦略目標があるという認識を持つことは、メンバーのプロジェクト実行に携わる意義を明確にします。
また、見落とされがちなプロジェクトの事後評価に関しても、プログラムマネジメントは、投資対効果をモニタリングする役割を担うことで、戦略目標達成に対する責任を果たします。


IT投資管理との関連性

プログラムは、企業のIT投資(またはIT資産の活用)によって戦略目標達成への価値を創造する一連の企業活動(関連する複数のプロジェクト群)と位置付けられます。そのため、プログラムマネジメントには、重要なタスクとして財務的な管理活動が含まれます。

企業におけるIT投資に対して、プログラムとして必要な全体額を要求(調達)し、各々のプロジェクトに適切に配分します。また、個々のプロジェクト状況を逐次モニタリングし、プロジェクト実行中、及び事後においても、その効果や価値を評価することで、リソースの調整を行います。
つまり、プログラムマネジメントは、プログラムのライフサイクルを通じて、投資に対する成果・価値の評価を行い、適宜そのコントロールを実施することが求められます。

プログラムマネジメントは、IT投資管理としての機能を部分的にではありますが、担っていると言えると思います。


最後に・・・
デスマーチと呼ばれる様々なプロジェクトと、それをコントロールする「プロジェクトマネジメント」の重要性、難易度は多くの実務者に認識されていますが、「プログラムマネジメント」に関しては、まだ十分に認識されていないかもしれません。

企業が求める変革(イノベーション)を達成するためには、非常に複雑で、難易度の高いプロジェクトの遂行が不可欠であり、それらのプロジェクト群が成功するためには、統合的なモニタリングとリソースやリスクのコントロールにより、環境変化に対して柔軟に対応するプログラムマネジメントが重要であると考えます。

今後、個々のプロジェクトの統合的な管理・成功に向けた活動という直接的な視点だけではなく、IT投資に対する効果(価値創造)をより高めるための活動という視点でも、「プログラムマネジメント」が、更に浸透していくことを期待します。


2013年5月31日金曜日

「IT投資マネジメントの変革」出版記念セミナーに参加して。

河田です。
今年からこのBlogの仲間がまた1人増えました。
2010年8月に1人で始めたこのBlogも、昨年4月に仲間が1人増え、今年4月からは
3人のITコンサルタントで共同運営です。ちょっと感慨深い。

内輪話ではありますが・・・仲間が増えることは、視点が広がることに繋がりますし、
良い刺激を受けられるので、他の仲間に負けないように頑張らないと!

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先週末に、前回の投稿でご紹介した書籍「IT投資マネジメントの変革」(松島桂樹編著)
出版記念セミナーに参加しましたので、今回はその話を少し。

主催団体、後援団体の力添えも影響していたのかもしれませんが、主幹の松島先生を
中心とした登壇者(講演)への関心の高さから、、、
休日にも関わらず80人収容の会場(@IBMの丸ビルオフィス)は満席でした。

当日のAgendaはコチラ

開始から終了まで約4.5時間の長丁場のセミナーでしたが、途中退席者も殆どいなかった
ことには、、、良い意味で驚きましたが、
聴講者も学術・研究分野の専門家の方々は勿論のコト、大手企業の企画部門の方から、
大手ITベンダーの方、リサーチ会社の方まで、かなり幅広い分野の方々が参加されており、
質疑の内容も多様性に富んでいたのではないかと思います。

私は、書籍の5章「価値再発見のオペレーション・マネジメント」について、お話を
させて頂きました。



  • 保守活動では、「経営の業務改革や環境変化に対応するための作業」が大きな割合を占めており、保守作業を必要悪と軽視することは、結果として「企業の競争力に重大な影響を及ぼす可能性」があること
  • システム運用の目的が「ITサービスのマネジメント」へ変化している中、安易なコスト削減は企業価値を毀損するリスクがあるが、その重要性は経営層には十分には届いておらず、「運用業務の可視化」は急務であること
  • 保守・運用の役割は、従来の「情報システムの維持・運行」から、「IT資産価値の維持・増大」へシフトしており、価値再発見のためにIT投資のオペレーション・マネジメントに取り組む意義は大きいこと

キーメッセージとして、上記を中心に発表しました。

緊張して、早口になり、自分の話すスピードに頭の回転が追いつかず・・・と
反省の残るプレゼンではありましたが、
  1. .多くの有識者の方々に自分の考えを伝えられたこと
  2. 様々なバックグラウンドを持つ参加者の皆さんから共感メッセージをもらえたこと
  3. 他の講演者、及び参加者の方々から斬新な視点の考えが聞けたこと

等、とても有意義で貴重な時間を過ごすことができたと思います。
やはり、アウトプットしていくことは、重要ですね。

また、3つ目の点について、セミナーを通して私が他の講演者・参加者の話の中で、特に
強く印象に残った話を一部ご紹介すると・・・


  • KPI等の評価は、時として「正しく評価をする方法を考えること」よりも、「評価の行為を通して気付くこと」の方が重要であること
  • クラウド対応の検討は一律的な議論で扱うべきではなく、企業における適性を踏まえて対象範囲を明確にした上で推進する必要があること
  • ITプロジェクトは、経営視点と現場視点の2軸4象限で「満足な成功」、「純粋な失敗」だけでなく、「不満足な成功」、「形式的な成功要件を満たした失敗」を定義する必要があること

私の表現力不足で、この文章だけでは上手く伝わらないかもしれませんが、、、
もし「詳しく知りたい!」という方がいらっしゃったら、ご連絡下さい。

ちなみに、当日の私のプレゼン資料は、以下でした。
 
価値再発見のためのオペレーションマネジメント from Tetsu Kawata


最後に・・・、

貴重な機会を提供して下さった主幹の松島先生、
 事務局として全てを巧みに仕切って下さった栗山さん、
  楽しい講演で盛り上げて下さった講演者の皆さん、
   鋭い質問でディスカッションを有意義なものにしてくれた多くの参加者の皆さん、
    また会場で参加者の入退室のガイドをしてくれたIBMの皆さん、

本当にありがとうございました!!!

2013年4月28日日曜日

ユーザー満足度の調査分析方法

中嶋です。
今月より、IT投資マネジメント情報局のブログメンバーに参画しました。といっても、IT投資マネジメント領域についてはまだまだ素人ですので、暖かい目で見守っていただければ幸いです。

今回は、先日プレスリリースとして公開された、IDCのマネジメントに関する調査レポートについて触れたいと思います。
Project Failure is all about Business Perceptions(原文はこちら

このレポートの中では、プロジェクトの主な失敗要因としてポイントを6つ挙げています。
  1. Inadequate project prioritisation and selection processes.
  2. Changing scope during the project.
  3. A lack of transparency beyond the IT management level.
  4. Insufficient executive involvement in IT project governance.
  5. Vagueness of the businesses' expected needs or project outcomes.
  6. No formalised mechanism for capturing and analysing end-user satisfaction with IT service delivery.
どれもよくある話ですね。
特に2.と5.は、私自身がメンバーとしてプロジェクトに関わっていたときから顕在化していました。相変わらず失敗要因の1つとして挙げられているところを見ると、マネジメント領域で改善・貢献出来るところは、まだまだたくさんあると感じます。

今回注目したのは、6.「ユーザー満足度の調査分析方法が確立されていない」で、確かにユーザー満足度が分かれば、ITプロジェクトの振り返りもより効果的な活動になると思います。例えば、要件がユーザーの求めるものとマッチしていたか、マッチしていなかった場合は何が足りなかったか、といった感じです。私もプロジェクトの振り返りを何度か行いましたが、あくまでプロジェクト内部での振り返りで、ユーザーに対する影響調査までは踏み込めていません。

では、ユーザー満足度はどのように調査分析すればよいのでしょうか?私は、テキストマイニングが解決策の1つとして有効に機能するのではないかと考えます。SNS等に書き込まれたささいなつぶやきから、良い評価・悪い評価を解析出来れば、ユーザー満足度の測定も可能になるはずです。ビッグデータの利活用ですね。

ただ、こんな調査結果も出ています。
日本データマネジメントコンソーシアムのアンケート調査結果ですが、ビッグデータの利活用は検証段階の企業も含めて3割程度しかなく、また米国と比較してもまだまだ後発と言えます。
※詳しくは、「IT Leaders~データマネジメント実態調査」の記事をご確認下さい。

ビッグデータ利活用が進まない主な理由は、
  • データ利活用の目的があいまい
  • データ分析が出来る人材確保が困難、分析のための組織が無い
  • 投資対効果の説明が難しい
の3つだそうです。その一方で、ビッグデータの利活用が重要であると認識している企業は半数以上あるという結果も出ています。データを有効活用したくても、分析出来る人材がいないからやれないのかもしれません。データの解析が出来る人材、データサイエンティストと呼ばれる人材が多く輩出されることで、データの利活用が進んでいくことを願います。そして、データサイエンティストと一緒になって、自分が携わったITプロジェクトの効果を測定してみたいものです。

勿論、効果測定結果を見てプロジェクトの改善にどう活かすのか?といった仕組みは考えないといけません。いつやるか?も含めて、じっくり考えたいです。

2013年4月14日日曜日

米国PMI「ポートフォリオマネジメント標準 第3版」の概要

藤原です。
今回は、米国のPMI(Project Management Institute)から発行されている「ポートフォリオマネジメント標準(The Standard For Portfolio Management)」の概要についてご紹介したいと思います。

PMIはプロジェクトマネジメントに関する知識体系である「PMBOKガイド(Project Management Body of Knowledge)」を発行していることで有名ですが、マネジメント活動の標準として、プログラムマネジメントやポートフォリオマネジメントに関するガイド本も発行しています。

ポートフォリオマネジメント標準では、戦略的なビジネス目標達成の為に求められる様々なプログラム、プロジェクトおよびその他の活動を集合したものを「プロジェクト・ポートフォリオ」と位置付け、この効果的なマネジメントを促進するための様々なプロセスや知識体系を記しています。

昨年の12月末に「PMBOKガイド」「プログラムマネジメント標準」「ポートフォリオマネジメント標準」の3つの文書について改訂が行われ、ポートフォリオマネジメント標準は、第3版が発行されました。
※現在、PMI日本支部において、日本語翻訳化作業が進められている状況です。
※原本はこちら(米国PMI 公式HP)

ポートフォリオマネジメントとは?

ポートフォリオマネジメント標準では、「ポートフォリオ・マネジメント」を以下のように記されています。(※私の翻訳による解釈ですが)

ポートフォリオ管理は、組織の戦略と目標を達成するための一つ以上のプロジェクト等のポートフォリオを協調して行う管理活動です。
それは、組織における評価・選択・優先順位付けというプロセスと、経営ビジョン・ミッション・バリューと整合した経営戦略の達成の為に、限られた内部資源を割り当てることの相互関係を含んでいます。
ポートフォリオ管理は、組織における戦略の変更や、投資に関する意思決定をサポートするための貴重な情報を提供します。


プロジェクトポートフォリオマネジメントのプロセスは、大きく3つの分類で定義されています。

<プロセスグループ>
  • 定義プロセス群(Defining Process Group)
  • 整合プロセス群(Aligning Process Group)
  • 認可・コントロールプロセス群(Authorizing and Controlling Process Group)

これらのプロセス群は、5つの知識エリアで分類され、各個別のプロセスが整理されています。

<知識エリア>
  • ポートフォリオ戦略マネジメント
  • ポートフォリオガバナンスマネジメント
  • ポートフォリオパフォーマンスマネジメント
  • ポートフォリオコミュニケーションマネジメント
  • ポートフォリオリスクマネジメント

プロセスグループと知識エリアのマッピングをまとめたものが以下となります。



第3版への改訂

第2版から第3版への改訂に伴い、このプロセス分類の定義や知識エリアが大きく変わりました。知識エリアに関しては、「ガマナンスマネジメント」と「リスクマネジメント」だけだったのが、「戦略マネジメント」「パフォーマンスマネジメント」「コミュニケーション」という3つのエリアが追加され、再構成されています。
私自身、まだ十分に本書を読み込んだわけではありませんが、第2版では、ポートフォリオの管理活動自体にフォーカスされた構成であるのに対し、第3版では、組織全体を取り囲むステークホルダーとの関係性や、経営戦略との整合を意識した内容について、より強調されたような印象を受けます。


今回ご紹介したポートフォリオマネジメント標準は、あくまで標準的な知識やプロセス、スキル等の参考とする知識や推奨される慣行等を纏めたものであり、全てに適用できるわけではありません。
企業毎に、文化やステークホルダーも違えば、IT投資管理の取組み方にも違いがあります。
ですので、一様にこれらの標準を適用するような事は現実的ではなく、自社で現在取り組まれている投資管理活動を評価する上での参考情報として、本書に記載されていることが自社で実施された場合どのような効果が見込めるか、追加すべきプロセスや重点をおくべきタスクは無いか、等という視点で、一度目を通してみるのも良いかもしれません。



2013年3月15日金曜日

「IT投資マネジメントの変革」(松島桂樹編著)発刊!

河田です。
今回は、昨日(3/14)発刊された「IT投資マネジメントの変革」をご紹介します。

IT投資マネジメントの変革IT投資マネジメントの変革
松島桂樹

白桃書房 2013-03-20
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この本は、国内でIT投資マネジメント分野の第一人者である武蔵大学 経済学部の松島教授が執筆・編集された書籍で、「戦略的IT投資マネジメント」(1999年)、「IT投資マネジメントの発展」(2007年)に続くシリーズ3作目の書籍になります。

執筆者には松島先生に加えてこの分野で一流の研究者、実務家の方々9名(+α)が参加されていますので、内容としても理論的に学べる内容だけでなく、実践的に役立つ内容も多く含まれています。

発売されたばかりの新書なので、具体的な内容の紹介は控え、皆さんにも是非本書を読んで頂きたいと思いますが、参考までに目次をご案内すると・・・

第1部 グローバリゼーションの環境変化とITの動向
 序章 グローバル時代のIT経営戦略
 2章 企業経営にとってのIFRS
第2部 IT投資の資産価値の増大
 3章 ライフサイクルポートフォリオマネジメント
 4章 情報システム構築における経営者の役割
 5章 オペレーション・マネジメントの価値増大
 6章 BCPにどこまで投資すべきか~IT-BCP投資マネジメント
 
第3部 グローバル、グループ経営におけるIT投資戦略
 7章 情報システム部門の再構築~戦略的IT組織とは
 8章 中小企業にとってのIT投資マネジメント
 9章 IFRSで変わる企業会計情報システム
 終章 IT投資マネジメントの研究方法

という3部構成になっています。

国内でIT投資マネジメントを約15年間研究されてきた松島先生が編著され、多くの有識者が関わっていますので、IT投資マネジメントに関心がある方は勿論のこと、IT+経営というテーマに興味がある方には、きっと何らかの気づきが得られるのではないかと思います。

出版社の白桃書房でも、、、
近年の経営環境の変化によりIT投資マネジメントの必要性はますます高まった。本書は,経営のグローバリゼーション,IFRS,クラウドコンピューティングを取り上げ,それらのIT投資マネジメントへの影響と改革を考察。企業経営者・SIer必読の書
と紹介されています。

そして、何故か???私も共著者の末席に加えて頂き、5章を共同執筆しています!
(という訳で、上記の+αは私のコトです。書評等で5章を酷評しないで下さいね。)

5章の内容は、このBlogの過去のエントリ「IT投資のオペレーションマネジメントとは?」でご紹介した内容にも深く関係していますが、一般にネガティブな捉えられ方をすることが多い、運用保守フェーズのIT投資のあり方について、書いています。

実は、、、前職のITコンサルファーム時代に、二作目の「IT投資マネジメントの発展」を読み、松島先生が提唱されている「合意形成モデル」を知ったことが、IT投資マネジメント分野に本格的に向き合うことになったキッカケだったので、数年経った現在にこのような形で三作目に携わることができたことは、とても感慨深く感じています。

ちなみに・・・この本はタイトルの通り、従来のIT投資マネジメントの考え方・アプローチの「変革」に踏み込んだ内容でもあるので、これから該当分野に携わる方には、二作目の「IT投資マネジメントの発展」から読むと、より理解が深まると思います。

IT投資マネジメントの発展―IT投資効果の最大化を目指してIT投資マネジメントの発展―IT投資効果の最大化を目指して
松島 桂樹

白桃書房 2007-05
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最後に・・・、この本を通して、本の執筆の大変さ、編集作業の難しさを知り得たことは、とても貴重な経験になりました。関係者の皆さんには、本当に感謝の気持ちで一杯です。

この場を借りて、改めて、、、ありがとうございました!

2013年2月28日木曜日

ITコーディネータとIT投資マネジメント

藤原です。
先日「ITコーディネータ」のケース研修を受講しました。
この研修を通じて、色々な刺激を受けたので、今回はその話をご紹介したいと思います。

本ブログを読んでくださる方には、「ITコーディネータ」とはどのようなものか既に知っている、または「ITコーディネータ」として資格を保有し、実務として活動をしている方もいらっしゃるかもしれませんが、ご存知無い方のために、ごく簡単ではありますが概要についてまとめると・・・

◆ITコーディネータとは
  • 2001年、通商産業省において、企業の戦略的IT投資を推進する国家プロジェクトの一環として制定された資格制度
  • 特定非営利法人「ITコーディネータ協会」にて資格認定等の運営を実施
  • 現在、経済産業省の推進資格として、約6500名の資格保有者が全国で活動中

ITコーディネータは「経営者の立場に立って、経営とITの橋渡しし、信に経営に役立つIT化投資を推進・支援するプロフェッショナル」と定義されています。
また、ビジョンとして「中堅・中小企業の経営課題に精通し、ITによる解決を通じて経営力強化に貢献する」と掲げられています。
つまり、経営とITの両面に精通し、企業の経営戦略の達成を目的としたIT戦略の実現を企業内外から推進・支援する人材となります。


ITコーディネータ プロセスガイドライン

ITコーディネータ協会では、企業がIT経営を推進する上で順守すべき基本的な原則とプロセスをガイドラインとしてまとめ、ITコーディネータが備えるべき知識体系として活用しています。
※協会のHPにて公開されておりますので、ご興味のある方はこちらからダウンロードしてみてください。

【プロセスガイドライン「IT経営プロセスモデル」の概要】

①IT経営認識プロセス・・・経営者・従業員が「IT経営が必要」ということの重要性を認識するプロセス
 (1) 変革認識フェーズ:経営者・従業員の気づき、課題と解決策、変革構想、等
 (2) 是正認識フェーズ:新たな環境変化・自社課題、改善への気付き、是正アクション等
 (3) 持続的成長認識フェーズ:ビジョンの評価、将来や新たな枠組みの洞察、等

②IT経営実現プロセス・・・経営戦略~IT戦略、調達・導入・活用に至るまでのプロセス
 (1) 経営戦略フェーズ:経営環境分析、経営戦略策定と展開、等
 (2) IT戦略策定フェーズ:IT環境分析、IT戦略策定と展開、等
 (3) IT資源調達フェーズ:調達計画策定、RFP発行、等
 (4) IT導入フェーズ:IT導入実行計画策定、IT導入実行と管理、等
 (5) IT活用フェーズ:ITサービス活用と管理、IT戦略達成度評価、等

③IT経営共有プロセス・・・IT経営の実現に必要な共通的なプロセス
 (1) プロセス&プロジェクトマネジメント
 (2) モニタリング&コントロール
 (3) コミュニケーション

これらの各プロセス、フェーズにおいて経営者の意思決定や現場の実務に対して助言や支援を行う役割をITコーディネータが担います。


◆ITコーディネータ ケース研修制度

ITコーディネータの認定条件としては、「筆記試験に合格すること」+「ケース研修を履修すること」が必要となります。

【ケース研修制度の概要】
  • 2012年にケース研修の実施形態が、15日間の集合研修から、eラーニングによる個人学習+集合研修(6日間)に変更
  • eラーニングによる個人学習は、プロセスガイドラインの要点を事前に学習し、以降に実施する集合研修につながる事前課題に取り組む
  • 集合研修では、プロセスガイドラインを理解した上で、モデル企業を題材にしたケーススタディを実施
  • 受講者はグループ毎に分かれ、モデル企業に関する経営戦略・IT戦略策定からITサービス活用までの各プロセスの様々なタスクを実践
  • 集合研修実施後は、取り組んだプロセスを復習することも兼ねて、該当部分のレポート課題を提出

今回、このケース研修を受講したことで、講師や他の受講者の方々との情報交換、ケーススタディでの取組みを通じて、多くの刺激を受けることができ、非常に有意義な時間だったと感じています。


◆研修を通じて感じたこと

  • 経営戦略~ITサービス活用といった幅広いテーマに関して、有益な情報や知識を体系的に習得できる

   個別プロセスを意識するのではなく、IT経営プロセスのライフサイクル全体を
   俯瞰することで、各プロセスやフェーズの位置付けと目的、後続するフェーズ
   との関連性や意義を認識しながら、タスクを理解することができます。

  • 受講者間の情報共有、人脈形成ができる

   受講者は様々な分野や職種の方々なので、ケーススタディにおいて、各々の業
   務経験から得られた知見や価値観を基に討論を重ねることによって、互いに新
   たな視点、考え方など多くの気づきを得られます。

残念だった点は、研修時間が短縮された影響もあり、限られた時間内で多く課題(ケーススタディ)に取り組まなければならない為、解釈を深化させたり、講師や受講者の実務上の経験等の情報共有の時間がもう少し確保できれば良かったなと感じています。


◆ITコーディネータとIT投資マネジメントの関連性

ITコーディネータがIT経営の実現に対する支援・推進を進めていく取組みは、IT投資マネジメント活動と非常に密接な関係にあると感じます。

プロセスガイドラインでは、IT戦略策定フェーズからITサービス活用フェーズにおける基本原則として「投資対効果の原則」を以下のように記載しています。

経営戦略目標達成のためのIT導入の目的を確認し、目的を達成した場合の効果とその効果を達成する仕組みを明らかにする。あらかじめ投資利益率・投資回収年数等の評価基準を設け投資対効果を評価する。これらの評価を参考にして、経営戦略目標達成の貢献度の高いものを優先して実施する。

つまり、IT経営実現のプロセスとして、戦略目標としての指標を定めると共に、その達成度評価による投資対効果の評価活動をIT経営のプロセスに組み込んでいます

IT戦略に基づく「IT導入」が目的ではなく、その投資・ITサービス活用によってもたらされる「経営戦略の達成」を目的として支援活動を行うITコーディネータにとって、IT投資管理に対する強い意識を持って各プロセスを推進していくことは、非常に重要であると感じます。

最後に。
ITコーディネータの有資格者は、地域毎や研究テーマ等によるコミュニティを形成し、様々な活動を行っています。今後、こうした活動を通じて、積極的な情報収集と企業への支援活動の実践に向けて取り組んでいきたいと考えています。


2013年1月31日木曜日

ITポートフォリオの実践に必要な3つのポイント



河田です。
昨年の振返り結果から、「アプリケーションポートフォリオ」、「PPM」に注目して、このBlogを訪問する方が多いことが分かりましたので、今回は「ITポートフォリオ」に関する話を少し。

ITポートフォリオについては、このBlogでも何度か取り上げたこともあり、抽象的な概念はある程度確立されているものの、具体論については見かけることが非常に少ないと感じています。

実は、昨年から「ITポートフォリオ」を中心テーマと扱っている研究会に参加し、多くの企業の皆さんと情報交換/意見交換をさせて頂いていますが、他のIT投資マネジメントの取組みに比べて実際の導入例は非常に少ないと感じています。

このような背景を踏まえ、今回はITポートフォリオの理論ではなく、実践向けのアプローチとして、具体的な手法と、ITポートフォリオを考える上で重要な3つのポイントについてご紹介します。

まず、「ITポートフォリオ」と聞くと・・・イメージでは、「戦略適合性」×「実現性」、「ROI」×「投資額」といった組合せのバブルチャートの例がよく使われます(私もイメージの説明にはよく使います)。



しかし、実際にITポートフォリオを活用する際には、このモデルは一つの例に過ぎず、
 ①どのような評価軸で分類するか?
 ②その評価軸をどうやってスコアリングするか?
という点が、実務上は非常に重要なポイントになります。

この①評価軸、②スコアリング方法については、何らかの正解がある訳ではなく実は色々な考え方があるので、まずは汎用的に公開されている情報からいくつかの手法をご紹介します。

----------
1.経産省の「業績評価参照モデル(PRM)を用いたITポートフォリオモデル活用ガイド
  • 「戦略適合性」×「実現性」の2軸で評価
  • 戦略適合性は、有効性、必然性、影響範囲の3視点で評価(計30点)
  • 実現性は、外部リスク、人的・組織的リスク、技術的リスク、プロジェクトリスクの4視点で評価(計20点)
  • 評価結果を4象限(2軸×平均値以上/以下)で分類し、案件を評価

2.経産省の「研修所研修教材」におけるITポートフォリオ
 <出典:経産省「IT経営協議会(H20.6)討議用使用」> 
  • 既存システムは「満足度」×「コスト要因」の2軸で評価(新規システムは業績参照モデルと同じ評価)
  • 満足度は、効果、機能充足度、操作性の3視点で評価(計40点)
  • コスト要因は、外部コスト、職員稼働量の2視点で評価(計25点)
  • 評価結果を4象限(2軸×平均値以上/以下)で分類し、案件を評価

3.政府調達のためのIT投資評価に関する調査研究
  • 戦略軸×技術軸の2軸で評価
  • 戦略軸は、下記5つの視点(8項目)で評価(50点)
  • 技術軸は、全般、開発 or 運用/インフラ視点(7項目)で評価(50点)
     
    (開発、運用/インフラ視点は選択制)

4.米国GSA(連邦政府一般調達局)の「Capital Planning and IT Investment Guide」
<「政府調達のためのIT投資評価に関する調査研究」より引用>
  • 「Technical Rating(技術要素)」×「Strategic Factor Rating(戦略要素)」の2軸で評価
  • 技術要素は、一般、開発 or 運用/インフラの視点(6~7項目)で評価(50点)
  • 戦略要素は、戦略的インパクト、便益への展望等の5視点(8項目)で評価(50点)

5.米国OMB(行政管理予算局)の「CAPITAL PROGRAMMING GUIDE v3.0
  • 「Suitability」×「Fitness」の2軸で評価
  • Suitabilityには、Strategic Alignment、Performance Measures等の指標を利用
  • Fitnessには、Serviece Reference Model、Technical Reference Model等の指標を利用
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如何でしょう?
リンク集のような話になってしまいましたが、実務者にとって少しは役立つ情報だったでしょうか?

文章だけでは、イメージし難い内容だと思いますので、興味のある方は各リンクからソース情報を是非ご参照下さい。

まずは、全体的なイメージだけでも掴みたいという方は、上記を含めたITポートフォリオモデルの概要を以下に公開しています。



今回は手法を中心にITポートフォリオを紹介しましたが、実際にITポートフォリオを活用する際の3つ目のポイント(一番重要なポイント)は、
 ③採用目的:何を説明するためにITポートフォリを使うのか?
という点にあります。

上述のような手法(テクニック)に走ってしまうと、忘れ去らることが多いですが、
ITポートフォリオは、「案件の取捨選択」、及び「アカウンタビリティ」といった主に経営層への報告に際して特に有効な仕組みですから、「何のために」を強く意識することが重要です。

なお、上記資料では応用例として「サービスポートフォリオ管理」、「投資分類毎のポートフォリオ管理」も紹介していますので、興味のある方は併せてご参照下さい。

最後に…「IT投資マネジメント情報局は、最低でも週次更新しなさい」という厳しくも温かい応援メッセージ付きの年賀状を送ってくれた大先輩のKさん、ご期待に沿えなくて・・・ごめんなさい。

メッセージはとっても嬉しかったのですが、一個人としては情報力(体力とも言う?)がまだまだ足りてないので、「仲間を増やして更新頻度を上げる」という作戦を4月目処で計画中です。
ご期待ください!