先日「ITコーディネータ」のケース研修を受講しました。
この研修を通じて、色々な刺激を受けたので、今回はその話をご紹介したいと思います。
本ブログを読んでくださる方には、「ITコーディネータ」とはどのようなものか既に知っている、または「ITコーディネータ」として資格を保有し、実務として活動をしている方もいらっしゃるかもしれませんが、ご存知無い方のために、ごく簡単ではありますが概要についてまとめると・・・
◆ITコーディネータとは
- 2001年、通商産業省において、企業の戦略的IT投資を推進する国家プロジェクトの一環として制定された資格制度
- 特定非営利法人「ITコーディネータ協会」にて資格認定等の運営を実施
- 現在、経済産業省の推進資格として、約6500名の資格保有者が全国で活動中
ITコーディネータは「経営者の立場に立って、経営とITの橋渡しし、信に経営に役立つIT化投資を推進・支援するプロフェッショナル」と定義されています。
また、ビジョンとして「中堅・中小企業の経営課題に精通し、ITによる解決を通じて経営力強化に貢献する」と掲げられています。
つまり、経営とITの両面に精通し、企業の経営戦略の達成を目的としたIT戦略の実現を企業内外から推進・支援する人材となります。
◆ITコーディネータ プロセスガイドライン
ITコーディネータ協会では、企業がIT経営を推進する上で順守すべき基本的な原則とプロセスをガイドラインとしてまとめ、ITコーディネータが備えるべき知識体系として活用しています。
※協会のHPにて公開されておりますので、ご興味のある方はこちらからダウンロードしてみてください。
【プロセスガイドライン「IT経営プロセスモデル」の概要】
①IT経営認識プロセス・・・経営者・従業員が「IT経営が必要」ということの重要性を認識するプロセス
(1) 変革認識フェーズ:経営者・従業員の気づき、課題と解決策、変革構想、等
(2) 是正認識フェーズ:新たな環境変化・自社課題、改善への気付き、是正アクション等
(3) 持続的成長認識フェーズ:ビジョンの評価、将来や新たな枠組みの洞察、等
②IT経営実現プロセス・・・経営戦略~IT戦略、調達・導入・活用に至るまでのプロセス
(1) 経営戦略フェーズ:経営環境分析、経営戦略策定と展開、等
(2) IT戦略策定フェーズ:IT環境分析、IT戦略策定と展開、等
(3) IT資源調達フェーズ:調達計画策定、RFP発行、等
(4) IT導入フェーズ:IT導入実行計画策定、IT導入実行と管理、等
(5) IT活用フェーズ:ITサービス活用と管理、IT戦略達成度評価、等
③IT経営共有プロセス・・・IT経営の実現に必要な共通的なプロセス
(1) プロセス&プロジェクトマネジメント
(2) モニタリング&コントロール
(3) コミュニケーション
これらの各プロセス、フェーズにおいて経営者の意思決定や現場の実務に対して助言や支援を行う役割をITコーディネータが担います。
◆ITコーディネータ ケース研修制度
ITコーディネータの認定条件としては、「筆記試験に合格すること」+「ケース研修を履修すること」が必要となります。
【ケース研修制度の概要】
- 2012年にケース研修の実施形態が、15日間の集合研修から、eラーニングによる個人学習+集合研修(6日間)に変更
- eラーニングによる個人学習は、プロセスガイドラインの要点を事前に学習し、以降に実施する集合研修につながる事前課題に取り組む
- 集合研修では、プロセスガイドラインを理解した上で、モデル企業を題材にしたケーススタディを実施
- 受講者はグループ毎に分かれ、モデル企業に関する経営戦略・IT戦略策定からITサービス活用までの各プロセスの様々なタスクを実践
- 集合研修実施後は、取り組んだプロセスを復習することも兼ねて、該当部分のレポート課題を提出
今回、このケース研修を受講したことで、講師や他の受講者の方々との情報交換、ケーススタディでの取組みを通じて、多くの刺激を受けることができ、非常に有意義な時間だったと感じています。
◆研修を通じて感じたこと
- 経営戦略~ITサービス活用といった幅広いテーマに関して、有益な情報や知識を体系的に習得できる
個別プロセスを意識するのではなく、IT経営プロセスのライフサイクル全体を
俯瞰することで、各プロセスやフェーズの位置付けと目的、後続するフェーズ
との関連性や意義を認識しながら、タスクを理解することができます。
- 受講者間の情報共有、人脈形成ができる
受講者は様々な分野や職種の方々なので、ケーススタディにおいて、各々の業
務経験から得られた知見や価値観を基に討論を重ねることによって、互いに新
たな視点、考え方など多くの気づきを得られます。
残念だった点は、研修時間が短縮された影響もあり、限られた時間内で多く課題(ケーススタディ)に取り組まなければならない為、解釈を深化させたり、講師や受講者の実務上の経験等の情報共有の時間がもう少し確保できれば良かったなと感じています。
◆ITコーディネータとIT投資マネジメントの関連性
ITコーディネータがIT経営の実現に対する支援・推進を進めていく取組みは、IT投資マネジメント活動と非常に密接な関係にあると感じます。
プロセスガイドラインでは、IT戦略策定フェーズからITサービス活用フェーズにおける基本原則として「投資対効果の原則」を以下のように記載しています。
経営戦略目標達成のためのIT導入の目的を確認し、目的を達成した場合の効果とその効果を達成する仕組みを明らかにする。あらかじめ投資利益率・投資回収年数等の評価基準を設け投資対効果を評価する。これらの評価を参考にして、経営戦略目標達成の貢献度の高いものを優先して実施する。
つまり、IT経営実現のプロセスとして、戦略目標としての指標を定めると共に、その達成度評価による投資対効果の評価活動をIT経営のプロセスに組み込んでいます。
IT戦略に基づく「IT導入」が目的ではなく、その投資・ITサービス活用によってもたらされる「経営戦略の達成」を目的として支援活動を行うITコーディネータにとって、IT投資管理に対する強い意識を持って各プロセスを推進していくことは、非常に重要であると感じます。
最後に。
ITコーディネータの有資格者は、地域毎や研究テーマ等によるコミュニティを形成し、様々な活動を行っています。今後、こうした活動を通じて、積極的な情報収集と企業への支援活動の実践に向けて取り組んでいきたいと考えています。
0 コメント:
コメントを投稿