2013年4月28日日曜日

ユーザー満足度の調査分析方法

中嶋です。
今月より、IT投資マネジメント情報局のブログメンバーに参画しました。といっても、IT投資マネジメント領域についてはまだまだ素人ですので、暖かい目で見守っていただければ幸いです。

今回は、先日プレスリリースとして公開された、IDCのマネジメントに関する調査レポートについて触れたいと思います。
Project Failure is all about Business Perceptions(原文はこちら

このレポートの中では、プロジェクトの主な失敗要因としてポイントを6つ挙げています。
  1. Inadequate project prioritisation and selection processes.
  2. Changing scope during the project.
  3. A lack of transparency beyond the IT management level.
  4. Insufficient executive involvement in IT project governance.
  5. Vagueness of the businesses' expected needs or project outcomes.
  6. No formalised mechanism for capturing and analysing end-user satisfaction with IT service delivery.
どれもよくある話ですね。
特に2.と5.は、私自身がメンバーとしてプロジェクトに関わっていたときから顕在化していました。相変わらず失敗要因の1つとして挙げられているところを見ると、マネジメント領域で改善・貢献出来るところは、まだまだたくさんあると感じます。

今回注目したのは、6.「ユーザー満足度の調査分析方法が確立されていない」で、確かにユーザー満足度が分かれば、ITプロジェクトの振り返りもより効果的な活動になると思います。例えば、要件がユーザーの求めるものとマッチしていたか、マッチしていなかった場合は何が足りなかったか、といった感じです。私もプロジェクトの振り返りを何度か行いましたが、あくまでプロジェクト内部での振り返りで、ユーザーに対する影響調査までは踏み込めていません。

では、ユーザー満足度はどのように調査分析すればよいのでしょうか?私は、テキストマイニングが解決策の1つとして有効に機能するのではないかと考えます。SNS等に書き込まれたささいなつぶやきから、良い評価・悪い評価を解析出来れば、ユーザー満足度の測定も可能になるはずです。ビッグデータの利活用ですね。

ただ、こんな調査結果も出ています。
日本データマネジメントコンソーシアムのアンケート調査結果ですが、ビッグデータの利活用は検証段階の企業も含めて3割程度しかなく、また米国と比較してもまだまだ後発と言えます。
※詳しくは、「IT Leaders~データマネジメント実態調査」の記事をご確認下さい。

ビッグデータ利活用が進まない主な理由は、
  • データ利活用の目的があいまい
  • データ分析が出来る人材確保が困難、分析のための組織が無い
  • 投資対効果の説明が難しい
の3つだそうです。その一方で、ビッグデータの利活用が重要であると認識している企業は半数以上あるという結果も出ています。データを有効活用したくても、分析出来る人材がいないからやれないのかもしれません。データの解析が出来る人材、データサイエンティストと呼ばれる人材が多く輩出されることで、データの利活用が進んでいくことを願います。そして、データサイエンティストと一緒になって、自分が携わったITプロジェクトの効果を測定してみたいものです。

勿論、効果測定結果を見てプロジェクトの改善にどう活かすのか?といった仕組みは考えないといけません。いつやるか?も含めて、じっくり考えたいです。

2013年4月14日日曜日

米国PMI「ポートフォリオマネジメント標準 第3版」の概要

藤原です。
今回は、米国のPMI(Project Management Institute)から発行されている「ポートフォリオマネジメント標準(The Standard For Portfolio Management)」の概要についてご紹介したいと思います。

PMIはプロジェクトマネジメントに関する知識体系である「PMBOKガイド(Project Management Body of Knowledge)」を発行していることで有名ですが、マネジメント活動の標準として、プログラムマネジメントやポートフォリオマネジメントに関するガイド本も発行しています。

ポートフォリオマネジメント標準では、戦略的なビジネス目標達成の為に求められる様々なプログラム、プロジェクトおよびその他の活動を集合したものを「プロジェクト・ポートフォリオ」と位置付け、この効果的なマネジメントを促進するための様々なプロセスや知識体系を記しています。

昨年の12月末に「PMBOKガイド」「プログラムマネジメント標準」「ポートフォリオマネジメント標準」の3つの文書について改訂が行われ、ポートフォリオマネジメント標準は、第3版が発行されました。
※現在、PMI日本支部において、日本語翻訳化作業が進められている状況です。
※原本はこちら(米国PMI 公式HP)

ポートフォリオマネジメントとは?

ポートフォリオマネジメント標準では、「ポートフォリオ・マネジメント」を以下のように記されています。(※私の翻訳による解釈ですが)

ポートフォリオ管理は、組織の戦略と目標を達成するための一つ以上のプロジェクト等のポートフォリオを協調して行う管理活動です。
それは、組織における評価・選択・優先順位付けというプロセスと、経営ビジョン・ミッション・バリューと整合した経営戦略の達成の為に、限られた内部資源を割り当てることの相互関係を含んでいます。
ポートフォリオ管理は、組織における戦略の変更や、投資に関する意思決定をサポートするための貴重な情報を提供します。


プロジェクトポートフォリオマネジメントのプロセスは、大きく3つの分類で定義されています。

<プロセスグループ>
  • 定義プロセス群(Defining Process Group)
  • 整合プロセス群(Aligning Process Group)
  • 認可・コントロールプロセス群(Authorizing and Controlling Process Group)

これらのプロセス群は、5つの知識エリアで分類され、各個別のプロセスが整理されています。

<知識エリア>
  • ポートフォリオ戦略マネジメント
  • ポートフォリオガバナンスマネジメント
  • ポートフォリオパフォーマンスマネジメント
  • ポートフォリオコミュニケーションマネジメント
  • ポートフォリオリスクマネジメント

プロセスグループと知識エリアのマッピングをまとめたものが以下となります。



第3版への改訂

第2版から第3版への改訂に伴い、このプロセス分類の定義や知識エリアが大きく変わりました。知識エリアに関しては、「ガマナンスマネジメント」と「リスクマネジメント」だけだったのが、「戦略マネジメント」「パフォーマンスマネジメント」「コミュニケーション」という3つのエリアが追加され、再構成されています。
私自身、まだ十分に本書を読み込んだわけではありませんが、第2版では、ポートフォリオの管理活動自体にフォーカスされた構成であるのに対し、第3版では、組織全体を取り囲むステークホルダーとの関係性や、経営戦略との整合を意識した内容について、より強調されたような印象を受けます。


今回ご紹介したポートフォリオマネジメント標準は、あくまで標準的な知識やプロセス、スキル等の参考とする知識や推奨される慣行等を纏めたものであり、全てに適用できるわけではありません。
企業毎に、文化やステークホルダーも違えば、IT投資管理の取組み方にも違いがあります。
ですので、一様にこれらの標準を適用するような事は現実的ではなく、自社で現在取り組まれている投資管理活動を評価する上での参考情報として、本書に記載されていることが自社で実施された場合どのような効果が見込めるか、追加すべきプロセスや重点をおくべきタスクは無いか、等という視点で、一度目を通してみるのも良いかもしれません。