2015年8月10日月曜日

一区切り(ブログ休止)のお知らせ

河田です。
今回は、「一区切り(=ブログ休止)」のお知らせです。

2010年8月にこのBlogを開設し、約5年間運営してきましたが、今回の投稿を持って「一区切り(ブログ休止)」としたいと思います。
理由は、ビジネス活動の選択と集中に伴い、このブログを書く上でのインプット/アウトプット時間が十分に取れなくなったためです。

まず、このブログを訪れてくれた皆さん、応援してくれた皆さん、アドバイスをして下さった先輩コンサルタントの皆さん、協力してくれた仲間、および関わった全ての人にお礼を言いたいと思います。

「本当にありがとうございました」

5年間を振り返ってみると、このBlogの運営を通して私自身は、非常に多くのことへの気づき、学びが得られたと思っています。

このBlogを通して知り合った方もいらっしゃいましたし、
業務上で知り合った方が(偶然にも)このBlogを見てくれていたこともありましたし、
このBlogがキッカケとなってこの分野の国内第一人者である松島先生の著書「IT投資マネジメントの変革」への共著のお誘い頂いたり、、、
というように、数多くのご縁に恵まれたことにも、心より感謝しています。

何らかのご縁?でこのBlogを訪れてくれた皆さんにとって、少しでも参考になる情報があったなら、共感を得られたなら、嬉しく思います。

IT投資マネジメント分野は、

  • 企業実務として関わっている人は数多くいるが、専門的なサイトはあまり無い
  • 「XXXしておけばOK」というような教科書的な(シンプルな)話も殆ど無い
  • 何より、経営~IT技術に至るまで、非常に広範な知識が求められる
  • 企業文化や事業におけるITの位置付けによって「適切な判断」が異なる

という難しさ、悩ましさがあったため、私自身は常にその答え「多くの人に受け入れられる概念、実践的なアプローチ」を模索してきましたが・・・
改めて考えると、IT分野で常に環境変化が起きている以上、その環境変化併せて、常に答えを探し続けなければならない(終わりの無い)「旅」のようなテーマであったのかもしれません。

今回の投稿のタイトルは、「最終回」と書きかけましたが・・・またいつの日か「旅」を再開するかもしれないので、現時点では「一区切り」という言葉を選んでいます。

なお、このBlogの代わりではありませんが、自社で「技術ブログ」を始めましたので、今後はそこで記事の投稿をしていく予定です。

Technology Topics by Brains

IT投資マネジメントとは直接的な関係は無く、先端オープン技術にフォーカスした話が中心ですが、このブログで過去に紹介していたIT投資のオペレーションマネジメントに関する話には触れる機会もありますので、該当テーマにご興味のある方は是非アクセスしてみて下さい。

皆さま、本当にありがとうございました!!!

2015年6月30日火曜日

ITシステム運用の重要性と新たな取り組みの必要性

藤原です。

今回は、ITシステム運用の重要性とその強化としての新たな取り組みの必要性について、最近強く感じることが多く、以前のエントリとも繋がりますが、改めて述べたいと思います。

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今月「AWS Summit Tokyo 2015」が開催されました。クラウド事業者としてマーケットをリードするAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)を提供するアマゾンデータサービスジャパンが、年次で開催する最も大きなカンファレンスイベントです。
弊社もAWSのテクノロジーパートナーとして様々なサービスをAWS上で運用している関係上、各種サービスの最新技術情報や企業における導入事例などの情報収集すべく、私も参加してきました。

基調講演で代表取締役社長の長崎氏が「Cloud has become the new normal(クラウドは新しい標準になった)」という言葉で表現されていたように、企業におけるクラウド利用への潮流は確実に進んでいていると感じました。

クラウドの利用が拡大していく理由として、
  • スピード・俊敏性の重要性
  • 顧客ニーズの多様化
  • データ活用・分析の拡大
  • 既存設備の有効活用
  • etc
といった環境変化やニーズに、クラウドが対応可能であると述べられていました。

こうした状況の中、企業がクラウド利用してビジネスを拡大していく上では「ITシステムの運用」について留意すべきであると私は思います。

クラウドであれば「設備は持たない」だから「システムのお守り=運用は必要ない」というのは誤解(今どきそんな考えの人が居ないかもしれませんが)で、今の企業のクラウド利用の形は、戦略的にクラウド上でシステムをデザインし、適切に維持・運用していくことが前提になっています。
システムが実現するサービスレベルを維持するための可用性や性能、さらにコスト抑制という様々な要素を踏まえて、適切に維持・運用していくという点では、従来のオンプレミス型で構築されたITシステムの運用と同じく極めて重要であると感じます。
実際に、このカンファレンス内で講演されていた「システム運用」をテーマとしたいくつかのセッションは、どれも超満員(もちろん私も参加)でした。

以前のエントリでは、「情報システム運用時の定量的信頼性向上方法に関する調査報告書」(IPA/SEC)の内容を元に、
  • 「運用コスト」と「運用に起因する障害発生」の比率が増加している
  • 運用ツール・取り組みとしての「障害予兆検知」について関心が高まっている
という事実に着目し、それらに対するの考察を述べました。

大規模化、複雑化、多様化するITシステムを適切に運用するためには、
ITシステムの運用実態を適切に把握し、
その運用監視を強化する(可視化による状況把握から変化に気づくための予兆検知の実現)
というアプローチ


つまり従来の運用監視ではなく、「障害予兆検知」といった技術・サービスの導入を本格化していことが必要であると改めて強く感じます。

更に、今後はITシステムのみならず、SDN/OpenFlowといった制御可能な仮想NW機器、IoT/M2Mで重要な役割を果たす各種センサー等、様々なインフラ・デバイスに対する運用強化が求められてくるのではないかと考えます。

こうした分野に携わる一実務者として、企業において「ITシステム運用の重要性」が認識され、その強化を目的として「障害予兆検知」といった新たな技術・サービスへの取り組みが進んでいくことを期待します。

2015年5月31日日曜日

「攻めのIT経営銘柄」の公表結果を見て思うこと

河田です。
先週26日に、「攻めのIT経営銘柄」が経産省、および東京証券取引所から公表されましたが、企業のIT投資に関する話でもあったので、今回はその話を少しご紹介したいと思います。

まず、「攻めのIT経営銘柄」とは、
経済産業省と東京証券取引所が共同で、IT活用に戦略的に取り組む企業を「攻めのIT経営銘柄」として選定する取組みで、下記のように定義されています。
積極的に「攻めのIT経営」に取り組む企業を投資家等へ紹介するとともに、IT活用の重要性に関する経営者の意識変革を促すことを目的とし、投資家等からの評価を受ける枠組みとして攻めのIT経営銘柄を創設しました。
IT活用における経営計画等への位置づけ、IT活用に関する組織体制、IT活用の実施状況や事後評価、セキュリティ対策への取組等の観点から各企業における「攻めのIT経営」への取組を評価し、優れたIT経営を行っている企業を「銘柄」として選定・公表することを通じ、企業による「攻めのIT経営」を促進することを目的としています
  対象は東京証券取引所の上場企業で、以下の5つの観点で選考されています。
  1. 経営計画における攻めのIT活用・投資の位置づけ
  2. 攻めのIT活用・投資の企画に関わる社内体制及びIT人材
  3. 攻めのIT活用・投資の実施状況(事業革新のためのIT活用・投資)
  4. 攻めのIT投資の効果及び事後評価の状況
  5. 攻めのIT投資のため基盤的取組
今回の発表(2015/5/26)では、18銘柄(18社)が選ばれています。対象企業等の詳細は、下記リンクをご参照ください。
IT投資の取組みと株式市場の評価と紐づけるという観点の発表結果を見てみると、対象企業と株価のインデックス値(※)の相関関係は、中々興味深いです。
(※)各銘柄に等金額投資した際の運用パフォーマンスの試算値(2005年1月初を起点100とし、各社に対し等金額投資をした場合の評価額の推移)
(出典:攻めのIT経営銘柄

攻めのIT経営を実施している(と評価された)企業は、他企業(平均)よりも運用パフォーマンスが
高く、特にリーマン・ショック以降はその差が顕著であるということになりますね。

また、選定された企業のレポートについても、内容としてはかなり概要的なものではありましたが、「経営方針におけるIT活用の位置づけ」と「ITを活用した事業革新の取り組みと成果」を具体的に紹介されている点は、参考になりますね。

但し、 昨年9月頃から各種メディアに取り上げられ、12月の創設時にはかなり話題にあがった話題性の高い取組みであったことを考えると、今回の結果発表は少し控えめな?扱いになっている気がします。

少し調べてみると、ITProの記事に、その要因が触れられていました。
1.調査票が送付された約3400社の内、回答した企業は210社(約6.2%)に留まる。
2.株主資本利益率(ROE)が業種平均を上回っているかを加味して選考している。

今回、選ばれた企業は、各社素晴らしい取組みをされており、結果も出しているのだと思いますが、回答率の低さ(=母数の少なさ)は、先行された価値を損なう面はあると思いますし、選考過程にROEを組込んでしまうと、IT投資の素晴らしさよりも、市場評価から逆算?という穿った見方もできてしまうのかな。。。と、少し残念に感じます。

評価の難しいIT投資に対する公的な取組みは、あまり無く、またIT投資の評価を株式市場評価と関係づける試みは、非常に興味深いと思いますが、上述のような話も含め、今後の課題はありそうですね。
個別企業の詳細は開示できないにしても、各評価指標に沿った評価結果(業種平均値、規模平均値)についてもう少し踏み込んだ情報公開があれば・・・と思います。

やはり、「IT投資の評価は難しい」という話に帰着してしまうのかな。。。

2015年4月30日木曜日

IT投資管理と「ITシステムの運用後の信頼性向上」という取組み

藤原です。

企業におけるITシステムの投資管理では、新規開発のシステムのみならず、運用後のシステムに対するマネジメントも重要であるという点については、過去のエントリ「IT投資のオペレーション・マネジメントとは?」でも記載の通りですが、それに関連して、ITシステムの”運用後”の取組みと課題に関する興味深いレポートが独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)より公開されましたので、今回はその内容のご紹介と考察をまとめたいと思います。

「情報システム運用時の定量的信頼性向上方法に関する調査報告書」(IPA/SEC)

本レポートは、ITシステムの運用時における信頼性向上方法(使用指標、指標測定データに基づく対策手法、予兆などの観測項目、観測データの分析手法など)に対する取組みの現状と課題を見出すことを目的として調査されたもので、以下の内容に添ってまとめられています。

  • ITシステム運用を取り巻く環境:ITシステムの複雑化、クラウド等の環境変化と障害発生の状況など
  • 運用プロセスと標準の動向:ITILとISO20000
  • 運用時の定量的指標事例:ITILやSLAなどに基づく定量的指標の事例
  • システム運用の信頼性向上ツール:運用支援ツールと障害予兆検出ツール
  • 運用の実態調査:実際の企業における運用実態(プロセス、指標、ツール、人材)
  • 運用時の定量的信頼性向上の現状と課題:開発と運用の統合における信頼性向上や、公的機関への期待等

詳細な内容については、原文を参照いただければと思いますが、特に私が注目したのは、以下の2点です。

  1. 「運用コスト」と「運用に起因する障害発生」の比率が増加している事実
  2. 運用ツール・取り組みとしての「障害予兆検知」に対する高い関心

1.「運用コスト」と「運用に起因する障害発生」の比率が増加

IT Proの2012年調査によると、保守開発を含む運用コストの比率が76%
また、政府IT Dashboard(2013)によると、ITシステム関連予算のうち、運用関連コストが80%という調査結果

この調査結果は、企業のIT投資全体に対して約”8割”という非常に大きな割合を占める「運用保守」フェーズのITシステムの管理活動は非常に重要であるということを示していると思います。

更に、ITシステムの障害発生のうち「運用・保守時の原因により発生」しているのが80%という調査結果に基づき、「運用時に起因する障害の比率が多くなり、運用時の信頼性向上が課題」と記されています。

投資マネジメントの観点としては、単に維持・運用コストの適正化というのだけではなく、「運用・保守過程にあるITシステムの資産価値を維持・増大」していくことも求められると考えます。
そこで、”システム運用後の信頼性を向上すること”が”IT資産価値を増大させること”に繋がると考えた場合、この「運用時に起因する障害発生の比率増加」という事実は、投資管理の観点からも取り組むべき重要な1要素であることを示していると言えるのでは無いでしょうか。

2. 「障害予兆検知」に対する高い関心

ITシステムの信頼性を向上させるため、障害発生の未然防止を実現するアプローチとして「障害予兆検出」に着目
企業の運用実態としては「予兆検知を活用した運用の自動化については今後の課題である」と記されています。

大規模化・複雑化する企業のITシステムにおいて、高いサービスレベル維持を実現するためには、
情報システムの運用保守に着目し、
その運用実態を適切に把握し、
その運用監視を強化する
(可視化による状況把握から変化に気づくための予兆検知の実現)
というアプローチが必要になってくると思います。

企業は、ITシステムの信頼性向上を果たすために、従来の運用監視を強化すべく「障害予兆検知」といった技術・サービスの導入を本格化していく必要があると感じました。
こうした取組みが「ITシステムの価値最大化」に繋がっていくと思います。


本レポートは、継続的に(年次)で調査・報告されるものかはわかりませんが、IT投資管理という側面においても関連の深い「運用後のITシステムの信頼性向上の取り組み」(=ITシステムの資産価値の維持・増大)について、企業の取り組みや実情を知るためにも継続的に調査され、レポートとして公開されることを期待します。


2015年3月31日火曜日

IT投資の可視化で気づくこと

河田です。
前回(1月)の投稿でご紹介した「IT投資の可視化の難しさ」に関連する内容として、2月に日本政府のITダッシュボードが機能強化され、行政事業レビューの情報が参照できるようになりましたので、その話を改めてご紹介したいと思います。

この行政事業レビューについては、内閣官房のサイトで、以下のように定義されています。
行政事業レビューは、各府省自らが、5,000を超える国の全ての事業について、概算要求前に、前年度の執行状況(支出先や使途)等の事後点検を行い、事業内容や目的、成果、資金の流れ、点検結果などを書いた各府省共通のレビューシートを作成、公表するものです。


「行政事業レビュー」について、詳しく知りたい方はコチラから。。。
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/gyoukaku/review.html

正式な表現ではあるものの・・・ITダッシュボードで「行政事業レビューの情報の参照」と言われるとちょっとイメージがつきにくいと思いますが、要は一定額以上の投資の支払い先の見える化ができるようになっています。

また、偶然にも・・・このBlogの前回投稿と近い視点でIT Proに特集記事が2月に出ていたので、興味のある方は是非、併せ読んで欲しいと思います。
[政府システム再起動5]ITダッシュボードが伝える改革の成果 (IT Pro)

このITダッシュボードの機能強化内容とIT Proの記事を眺めてみると、、、IT投資の可視化の目的について、改めて考えさせられるところがあるのではないかと思います。

まず、ITダッシュボードでは、その狙いとして、下記の3点が挙げられています。
  • 予算の効果的活用
  • 利便性の高いシステムの実現
  • IT業界の成長促進
(出典:ITダッシュボード)

そして、ITダッシュボードで機能強化された「行政事業レビュー」のページを見てみると、省庁毎にどのベンダーとの契約額が多いのかが分かりやすく見える化されています。

この取組み自体は、契約管理という面で非常に有効なものだと思いますが、一方で、
  • いわゆる中央省庁が1府13省庁あるはずなのに、ITダッシュボードで確認できるのが6省庁に限定されているのは?
  • (注記はされているものの)システムに関わるIT投資だけでなく、システムに関わる予算以外の金額も含まれているのは?
という点については、可視化に際しての公平性という観点で疑問が残ります。

また、具体的に省庁毎の支出先データを見てみると、、、

(総務省の支出先、出典:ITダッシュボード)
(財務省の支出先、出典:ITダッシュボード)
(厚生労働省の支出先、出典:ITダッシュボード)
 
(法務省の支出先、出典:ITダッシュボード)
 
前述のIT Proの記事の中でも触れられていますが、
  • 省庁毎に特定のITベンダーへの支出が著しく偏りがあること
  • 従来からの商慣行上の契約窓口企業(いわゆるITベンダーではないファイナンス企業、文具企業など)名が公開されており、実際のITベンダーの内訳が見えないこと
という点については、ITダッシュボードの狙いの一つでもある「IT業界の成長促進」に適ったものとは言えないと思いますし、情報公開のアカウンタビリティとしても疑問を感じます。

少しネガティブな話が続きましたが、個人的にはこの状態でも情報公開に踏み切った関係者の判断は素晴らしいとも思っています。
当事者でなくても、今回のように可視化されて、また定量的な比較によって気づくことは多く、課題が見えたことから生まれてくる改善の余地が大きいとも言えるので。
そう考えると、可視化の一番の目的は「気づきを得ること」と言えるのではないかと思います。

まだ始まったばかりの取組みですから、今後の更なる情報の公開と、狙いに適った取組みへの拡充を、IT投資に関わるコンサルタントとして、また国民の一人として期待したいと思います。

2015年2月28日土曜日

イノベーションプロジェクトを失敗しないために

藤原です。

PMI(Project Management Institute)から発行されている会員向け月刊誌のコラム記事が興味深かったので、今回は、その内容について簡単にご紹介させていただきたいと思います。

コラムのタイトルは 
When new ideas fall flat
新しいアイデアが失敗に終わるとき


コラムではイノベーションプロジェクト、つまり革新的なサービスを企画・開発していく際の主な失敗理由とその回避策について述べられています。

1. ガバナンスの不足
  • イノベーションの責任は1人の担当者が負えるものでは無いが、利益がないと判明した場合に説明責任を負う役割を位置づける必要がある
  • 適切なガバナンスが欠けていると、責任が分散し、イノベーションプロジェクト成果なしに終わる
  • アイデアの創出、選別、ポートフォリオの選択・優先順位付け、実現の方法についてフレームワークで規定し、一連の主要指標を用いて、フレームワーク遵守する必要がある
  • 主要指標については、運営委員会や取締役会等で定期的にレビューしなければならない
2. 不明瞭なゴール
  • 目的意識は、チームのイノベーションを推進する主な要因
  • したがって、イノベーション・プロジェクトの背景にあるゴールをチーム・メンバーに確実に理解させる必要がある
  • チームがプロジェクトやプログラムの価値を信じていない限り、情熱を持って取り組むことはない
  • 的確なゴールを明確に伝え、論じることは、イノベーションの失敗を防ぐために不可欠な対策
3. 顧客の無視
  • イノベーションの失敗に共通する原因は、イノベーション・プロセスの中で顧客のフィードバックを無視すること
  • 重要なステークホルダーのフィードバックを無視したために、普及や売上が伸び悩んだ例は数多くある
  • ステークホルダーは、洞察とアイデアの最良の情報源となる可能性がある
  • 顧客のフィードバックは、製品の長期的な実現性に関するきわめて重要な予測
4. 完璧さの追求
  • まずまずの機能を備え今すぐにでも発売できる革新的な製品、多様なオプション機能が付くものの 1 年後にならないと発売できない製品、前者の方が有利
  • 必要以上に機能を持たせようとすると、スコープ・クリープが絶えず発生し、プロジェクトが行き詰まる恐れがある
  • 完璧を追求する場合、プロジェクト費用が膨らみ、時間が長引くと、製品を購入する意欲のある顧客を失う可能性がある

現在、サービス企画を担当している事もあり、フムフムと読んでいました。

述べられている事は、ごく当たり前の事なのかもしれませんが、イノベーションという革新的なサービスを生み出したいという一心で企画を進める場面では、自身のアイデアに執着してしまったり、何らかのバイアスがかかった状態で進めることも多く、独り善がりなものになる可能性も否めません。
かといって、あれこれ考えすぎてスピード感を失い、しかるべきタイミングを逸してしまう可能性もあります。
とりわけ、ITの業界ではスピード感は非常に重要なポイントの一つと言えます。

コラムで述べられている点を簡潔に纏めると
イノベーションプロジェクト、すなわち革新的なサービス開発は
- 組織的に
- 情熱を持って
- 顧客の声を大事に
- スピード感を持って

が重要という事でしょうか。

4つのポイントに留意して、今後も革新的でイケてるサービスの企画・開発に取り組んでいきたいと思います。

2015年1月31日土曜日

IT投資の可視化の難しさ

河田です。
2015年の最初に何を書こうかなーと考えていたら、気がつけば・・・1月ももう終わりですね。

検討視野を広げるために暫くは、IT投資マネジメントから少し離れた関連テーマを紹介していましたが、このBlogを訪れる方の多くは、
  • IT投資マネジメント、IT投資管理に対する関心が高い
  • 実務的なテーマに対する関心が高い
ということが、アクセス結果からも見えてきたので(それをタイトルとしたBlogですから、当然と言えば当然ですが・・・)、久しぶりにIT投資の本題テーマを扱いたいと思います。

ここ数ヶ月だけでも、IT投資マネジメントについていくつかの興味深い記事がアナウンスされていたので、検討テーマは数多く?ありますが、実務者の目線で役立つ話?、考えておくべき話?として、今回は日米のITダッシュボードから、「IT投資の可視化の難しさ」について、ご紹介したいと思います。

このBlogの過去のエントリ「IT Dashboardに見るIT投資の情報公開」でもご紹介していますが、米国では2009年から、「IT投資の可視化」の取組みとして米国政府がITダッシュボードを公開しています。
また、ご存知の方も多いと思いますが、米国のITダッシュボードに倣う形で、昨年7月には日本政府(内閣官房)から、「日本版ITダッシュボード」が公開されました。
技術面ではオープン技術が積極的に採用されたこと、環境面では富士通のクラウド基盤が採用されたこと等も、話題になったと記憶しています。

ちなみに、日本版ITダッシュボードは、「IT投資情報」だけでなく、「開発計画・実績情報」、「「技術情報の蓄積・公開」の公開も計画していることが、米国IT Dashboardとの違いと発表されていましたが、現在までのところでは、その範囲拡大には至っていないようです。
 
(出典:http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/skkkaigi/dai6/siryou12.pdf
 
前置きが長くなりましたが、日米のITダッシュボードを見比べてみると、「IT投資の可視化」の考え方、情報の深さに大きな違いがあります。
 
 まず、米国のIT Dashboardでは、IT投資の全体評価を「CIOによる評価」、「プロジェクトコスト」、「プロジェクトスジュール」の3つの視点で、状態も3区分「Green/Yellow/Red」に分けて可視化しています(各々の状態評価の基準もしっかりと定義されています)。<図1>

図1(出典:https://itdashboard.gov/portfolios

これを見れば、各々の評価視点で「Yellow」評価、「Red」評価されているプロジェクトが一定比率あることも分かります(実際に、CIO評価では4.5%、コスト評価では11.9%、スケジュール評価では14.2%がRed評価されています)。

さらに、情報をドリルダウンしていくことで、各々のプロジェクトの詳細情報が公開されており、投資額は勿論のこと、その影響や経緯(どのタイミングで評価が変動したのか?、その理由が何なのか?、他の視点での評価はどうなっているのか?)まで可視化されています。<図2>

 
個々の取組みのKPIに対する実績についても、Operational Performanceとして公開しており、投資に対する透明性のかなり高い情報公開(IT投資の可視化)になっていると感じます。<図3>


次に、日本のITダッシュボードを見てみると、IT投資の評価は・・・個別の取組みを「実施した/一部実施した/実施できなかった」 基準で個別評価し、「晴れ/晴れ&曇り/(曇り or 雨?)」で全体評価する形で可視化しています。<図4>


図4(出典:http://www.itdashboard.go.jp/Achievement/index#100
これを見る限り、全体評価されている23項目の内、晴れ&曇り評価は3つのみなので、総じて言えば上手く行っているのかなーという推測ベースの判断に依存します。

ドリルダウンをすると、状況としてのプロジェクトの詳細が見れるようになっていて、評価の理由は公開されています。<図5>
しかし、実施できないことによる影響や経緯は分かりませんし、KPIが定義されているにも関わらず評価の視点がKPIには関係の無い実施状況のみというのは、少し残念な気がします。

図5(出典:http://www.itdashboard.go.jp/Public/opendataPropulsion#100

見比べてみると、米国のIT Dashboardをモデルにしたはずなのに、日本のITダッシュボードは(少なくとも現時点では)かなり残念な状況にあるようにも思いますが、日本版のITダッシュボードの方が情報公開が進んでいると感じられる部分もあります。

例えば、組織毎の投資額、投資比率に関する情報は日本版だけでなく米国版にもありますが、組織毎のシステム数や、システムアーキテクチャ区分のシステム数、投資額のような投資の内訳の可視化は日本版のみで提供されています。<図6>

図6(出典:http://www.itdashboard.go.jp/Statistics/compare#200

このように、IT投資の「評価」という観点で考えれば、米国版の方が明らかに「IT投資の可視化」が進んでいると言えますが、IT投資の「情報公開」という観点で考えると、分かりやすい表示、様々な軸によるレポーティングをしている日本版の「IT投資の可視化」もアプローチとしては妥当性があるようにも感じられます。

国民性という概念で総論を語るのはあまり好きではありませんが、この2つのダッシュボードの違いは、その前提となる環境や狙いの違いは明らかにあると思います。
 
つまり、IT投資の可視化をする際には、その狙いや環境を踏まえて具体的な方法を選ぶ必要があると言えます。もう少し踏み込んで言えば、「情報公開は精緻であるべき、責任は明確にすべき」的なスタンスで考えれば、米国版の情報公開の方が望ましいと言えますが、「情報公開は責任云々よりも分かりやすくあるべき」というスタンスならば、日本版の情報公開の方が適しています。

実際に、企業におけるIT投資マネジメントの成熟度や経営層の考え方は一律ではないため、可視化において何を重視するのか?、自社ではどのような情報公開の方法が適切なのか?をしっかりと考えなければならないことを、この2つのダッシュボードは示唆しているように思います。

興味を持った方は、是非2つのダッシュボードを見比べてみて下さい。