2015年5月31日日曜日

「攻めのIT経営銘柄」の公表結果を見て思うこと

河田です。
先週26日に、「攻めのIT経営銘柄」が経産省、および東京証券取引所から公表されましたが、企業のIT投資に関する話でもあったので、今回はその話を少しご紹介したいと思います。

まず、「攻めのIT経営銘柄」とは、
経済産業省と東京証券取引所が共同で、IT活用に戦略的に取り組む企業を「攻めのIT経営銘柄」として選定する取組みで、下記のように定義されています。
積極的に「攻めのIT経営」に取り組む企業を投資家等へ紹介するとともに、IT活用の重要性に関する経営者の意識変革を促すことを目的とし、投資家等からの評価を受ける枠組みとして攻めのIT経営銘柄を創設しました。
IT活用における経営計画等への位置づけ、IT活用に関する組織体制、IT活用の実施状況や事後評価、セキュリティ対策への取組等の観点から各企業における「攻めのIT経営」への取組を評価し、優れたIT経営を行っている企業を「銘柄」として選定・公表することを通じ、企業による「攻めのIT経営」を促進することを目的としています
  対象は東京証券取引所の上場企業で、以下の5つの観点で選考されています。
  1. 経営計画における攻めのIT活用・投資の位置づけ
  2. 攻めのIT活用・投資の企画に関わる社内体制及びIT人材
  3. 攻めのIT活用・投資の実施状況(事業革新のためのIT活用・投資)
  4. 攻めのIT投資の効果及び事後評価の状況
  5. 攻めのIT投資のため基盤的取組
今回の発表(2015/5/26)では、18銘柄(18社)が選ばれています。対象企業等の詳細は、下記リンクをご参照ください。
IT投資の取組みと株式市場の評価と紐づけるという観点の発表結果を見てみると、対象企業と株価のインデックス値(※)の相関関係は、中々興味深いです。
(※)各銘柄に等金額投資した際の運用パフォーマンスの試算値(2005年1月初を起点100とし、各社に対し等金額投資をした場合の評価額の推移)
(出典:攻めのIT経営銘柄

攻めのIT経営を実施している(と評価された)企業は、他企業(平均)よりも運用パフォーマンスが
高く、特にリーマン・ショック以降はその差が顕著であるということになりますね。

また、選定された企業のレポートについても、内容としてはかなり概要的なものではありましたが、「経営方針におけるIT活用の位置づけ」と「ITを活用した事業革新の取り組みと成果」を具体的に紹介されている点は、参考になりますね。

但し、 昨年9月頃から各種メディアに取り上げられ、12月の創設時にはかなり話題にあがった話題性の高い取組みであったことを考えると、今回の結果発表は少し控えめな?扱いになっている気がします。

少し調べてみると、ITProの記事に、その要因が触れられていました。
1.調査票が送付された約3400社の内、回答した企業は210社(約6.2%)に留まる。
2.株主資本利益率(ROE)が業種平均を上回っているかを加味して選考している。

今回、選ばれた企業は、各社素晴らしい取組みをされており、結果も出しているのだと思いますが、回答率の低さ(=母数の少なさ)は、先行された価値を損なう面はあると思いますし、選考過程にROEを組込んでしまうと、IT投資の素晴らしさよりも、市場評価から逆算?という穿った見方もできてしまうのかな。。。と、少し残念に感じます。

評価の難しいIT投資に対する公的な取組みは、あまり無く、またIT投資の評価を株式市場評価と関係づける試みは、非常に興味深いと思いますが、上述のような話も含め、今後の課題はありそうですね。
個別企業の詳細は開示できないにしても、各評価指標に沿った評価結果(業種平均値、規模平均値)についてもう少し踏み込んだ情報公開があれば・・・と思います。

やはり、「IT投資の評価は難しい」という話に帰着してしまうのかな。。。

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