2014年8月31日日曜日

IT投資管理視点でみるビックデータ活用の課題

河田です。
〆切前にBlogを慌てて書いていると、学生時代の夏休みの宿題を思い出します。
大人になっても、人間の中身はあまり変わらないのかもしれませんね。

少し仰々しいタイトルになりましたが、社外活動で調査レポートを眺めていたら、調査年度、主体の違うレポートから興味深い共通性と違いに気がついたので、今回はその話を少し。

ご紹介するレポートは、以下の2つです。

JUASの調査は、年次でIT投資管理の傾向が把握できる貴重なレポートですが、今年度はトピックスの一つとして「ITトレンド(ビッグデータ)」が取り上げられています。
NRIの調査は、タイトルの通り「ビッグデータの利活用」にターゲットをあてたものです。

この2つのレポートから、「ビッグデータの活用状況」「ビッグデータの活用における課題」の2点に焦点をあてて、引用、比較しまみます。


【ビッグデータの活用状況】

まず初めにNRIの調査結果では、


(出典:NRI「ビッグデータの利活用に関するアンケート調査」)
  • 調査対象企業の内、約6割がビッグデータ活用を自社の検討課題と認識、今後の課題認識も含めるとその比率は約8割へ。
  • 活用状況は、企業規模(売上規模)と概ね相関関係があり、売上規模が1兆円以上の会社では約3割の企業が以前から活用していると回答しているのに対し、同規模が1000億円未満の会社では約1割に留まる。

次にJUASの調査結果では、

(出典:JUAS「企業IT動向調査2014」)
  • 調査対象企業の内、現状でビッグデータを活用しているのは全体の1割未満(導入済みが4.8%、導入準備中が3.6%)で、検討中の企業を含めても2割強。
  • 但し、今後(3年後)は導入済みが10%、導入準備中が12%、検討中が23.5%と大幅な増加見込みであり、その比率は4割を超える。
  • 活用状況は、企業規模(売上規模)との相関関係があり、売上規模が1000億円以上の会社では導入済みが7.3%、導入準備中が6.7%、検討中が24.2%と3年後の平均値に近い。

「活用状況」は、調査方法等によって数値に多少のバラつきがありますが、2つのレポートで概ね同じ傾向を示しています。


【ビッグデータ活用における課題】

NRIの調査結果では、

(出典:NRI「ビッグデータの利活用に関するアンケート調査」)

  • ビッグデータ活用における課題は、上位から「導入目的の明確化」、「投資対効果の説明」、「担当者のスキル不足」、「人材不足」、「人数不足」。
  • 「投資対効果の説明」を課題視している比率は45%。


次にJUASの調査結果では、

(出典:JUAS「企業IT動向調査2014」)
  • ビッグデータ活用における課題は、上位から「導入目的の明確化」、「体制/組織の整備」、「技術の習得、選択」。
  • 「費用対効果の説明」を課題視している比率は約25%(5番目の課題)。

「課題」については、導入目的の明確化が一番の課題であること、人材・体制・組織といったヒト系の課題が多いことは、2つのレポートに共通していますが、「投資対効果(費用対効果)の説明」に対する課題認識の比率は、2つのレポートで比較的大きな差異が出ています。
また、JUASの調査結果において、該当要因を一番の理由に挙げた企業は5.4%と比率としても少ないと言えます。


長くなりましたが、ポイントをまとめると
  • ビッグデータ活用における一番の課題が、「導入目的の明確化」という手段と目的の逆転現象が発生していること
  • ビッグデータ活用において、「投資対効果の説明」を課題視している企業は大きく減少してきている(可能性がある)こと
この2点については、ビッグデータ活用をIT投資管理のテーマとして考える上で、今後も注視しておく意義があると思います。
少し先読みすれば、「ビッグデータ」がバズワードの期間を超えて、多くの企業で地に足のついた検討・議論が進んでいると言えるのかもしれませんね。

2014年7月31日木曜日

「ドラッカー・スクールで学んだ本当のマネジメント」を読んで

中嶋です。
W杯が終わり梅雨も明け、いよいよ夏到来です。
猛暑続きで屋内に籠って読書することが多くなったこともあり、
先月に引き続き読書ネタを書かせていただきます。

今回のテーマはこちらです。

ドラッカー・スクールで学んだ本当のマネジメント
ドラッカー・スクールで学んだ本当のマネジメント
藤田勝利 著

出版社:日本実業出版社
発売日:2013-07-19
価格 :¥1,944


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ドラッカーといえばマネジメント、マネジメントといえばドラッカーということで、
ドラッカー関連の書籍の1冊として、今回手に取って読みました。

本書は実際に著者がドラッカー・スクールに留学し、
そこでマネジメントについて学んだことを実際にどう活かしたかという視点で
まとめています。

目次:
第1章: 「セルフ・マネジメント」から始まる
第2章: マネージャーは何をめざすのか
第3章: マーケティングの本質−顧客創造的な会社とは
第4章: イノベーションという最強の戦略

第5章: 会計とマネジメントの「つながり」
第6章: 成果をあげる組織とチーム
第7章: 情報技術とコミュニケーションについて本当に大事なこと

若干異なるところもあるかもしれませんが、
実はこの章立て、スクールで実際に学ぶ順に章立てしているそうです。
いきなり組織論を学ぶのではなく、
しかも自分自身(セルフ・マネジメント)から始めるというところが、
個人的には驚きでした。

というのも、ドラッカー・スクールには以下の原則があるそうです。

 「自分自身をマネジメントできなければ、組織をマネジメントすることはできない」
 (第1章より引用)

どうですか?
当たり前の話ではありますが、改めて言葉にされると、実に耳が痛くなりますね。
過去を振り返ってみても、なかなか自分を理解している人は少ないように思います。

これはマネジメントに携わる人だけに限った話ではありません。
まずは自分。自分自身の強み・弱み、興味がある分野、今後やってみたいことを
しっかり理解していないと、弱みばかり出すことになってしまって
成果も出せない状態になりかねません。
※W杯でも個の力、レベルというのが問われていたように思います。

やはり強い組織、成果を出す組織とは、
 個々が自分の役割を分かっている→自分の強みを知っている
であることが絶対条件だと思います。
また、強みにフォーカスした組織であれば相乗効果として、
 お互いを尊重し合える、信頼し合える
ことにも繋がります。「信頼し合える」とは「任せる」ことが出来るということです。
信頼出来なければ"指示"は出来ても、"委任"は出来ないと思います。
"指示"ではコントロールしているだけで、マネジメントとはいえません。
信頼し合える組織になるためにも、マネージャーは組織体制を形成するときに、
個々のメンバーの個性をしっかり理解していただきたいものです。

自分自身が過去に携わったプロジェクトを振り返ってみても、
成功したプロジェクトは大変だった時期があったとしても活気があり、
全体としてモチベーションが高かったように感じます。
それも冷静に考えてみると、誰に何をやってもらうのがいいか?と
人にフォーカスを当てて組織づくりをしていたように思います。
そう思うと、計画って面倒くさいことだけど重要なことなんだと改めて思いました。

第2章では、
 マネジメントとは、人と組織を活かして社会的な成果をあげる、そして、結果として
 多くの人の人生を、よりよくすることができる仕事である(第2章より引用)
と書いてあるのも納得です。人の成長、楽しさを生み出せる仕事ではないかと思います。
一番楽しいのは、信頼出来るメンバーとお客さまへの成果を出すことです。
それを推進していけるのが、マネジメントであり、マネージャーだと私は思っています。

管理職ではなく、マネージャーになりたいという人がもっと増えればいいのに…
という想いを残して、今回のブログはおしまいにしたいと思います。

2014年6月30日月曜日

「分析力を武器とする企業」を読んで

藤原です。
現在、企業におけるデータ活用を目的とした各種サービスの開発に携わっていることもあり、以前から気になっていた書籍を読んでみました。

分析力を武器とする企業分析力を武器とする企業
トーマス・H・ダベンポート ジェーン・G・ハリス 村井 章子

日経BP社 2008-07-24
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”データ分析が企業活動における競争優位を生み出す”というメインテーマに沿って、分析を武器にする企業の特徴や具体的な事例、活用方法から、その分析活動を支える組織、人材、技術に至るまで幅広くまとめられています。
2008年に発刊された書籍であることから、企業の事例など多少の古さは感じますが、企業においてデータ活用を考える上で、組織としての在り方、人材といった点について多くの示唆がある良書だと思います。

続編「分析力を駆使する企業 発展の五段階」も発刊されており、企業においてデータ分析に取り組むための実践的なアプローチ等が書かれています。
こちらの方もまた別の機会にご紹介したいと思います。

さて、本書は2部構成(全9章)でまとめられています。

第1部:分析力を武器とする企業の特徴(第1章〜第5章)
 →データ分析の定義から、武器にできている企業の特徴、データ分析の活用事例など
第2部:分析力を組織力にする(第6章〜第9章)
 →データ分析に取り組むための組織戦略、人材、技術など

企業が競争優位を勝ち取り、成長を続けていくためにはデータ分析が有益であること、それを様々な企業の事例や現象によって、その主張を裏付けるとともに、そのデータ分析力を高めるために、企業としてどう取り組むべきか、という点がまとめられているのですが、その中でいくつか自分が感じた点などを綴ってみたいと思います。

本書で言う分析とは、データを多角的・多面的に活用して統計分析・定量分析を行い、説明モデル・予測モデルを作成し、事実に基づく意思決定、行動に結びつけるところまでを意味する。(第1章)

→ 分析の定義として「行動に結びつける」を含んでいる点で納得です。
 どんなデータ分析も目的を伴わないと意味が無いですし、その結果に基づき、実際にアクションを起こせることが重要だと考えます。
 データ分析は定例会議の為の報告サマリ(可視化)の為にあるのではないので、その先にどう改善できるのか、どこを強化すべきか、というアクションに結びつくような意味のある分析内容(対象データや分析指標)でなくてはいけないですよね。

分析力を武器にする企業の特徴(第2章)
第1: 分析力が戦略的競争優位性のベースとなっている
第2: 分析に組織を挙げて取り組んでいる
第3: 経営幹部が分析力の活用に熱心である
第4: 分析力に社運を賭け戦略の中心に据えている


→ 今やコンシューマーを対象としたサービスを提供する企業はデータ分析は必須であり、組織的に取り組んでいるのが現状ですね。ただ、競争優位という部分だけでなく、企業内の業務活動(業務改善、精度向上、生産性向上など)においても分析力は有益だという点で、分析の対象を様々な分野・部門に応用していく企業が増えていくでしょうね。

分析力は持続可能な競争優位となりうるか(第3章)
競争優位というものは、動く標的である。これを仕留めるためには、絶え間ない改善とイノベーションが必要だ。


→ データ分析に限らず、企業活動全般に言えることではありますが、どのような取組みも継続的改善活動を伴って、効果を維持・発展できるということですね。
 データ分析は、対象データの選定やアルゴリズム等、有益な結果を得られるまでに多くの時間や試行錯誤が必要となります。
 しかし、その有益な分析パターンも変わっていくことを認識し、執着するのではなく、柔軟に分析対象やアルゴリズムを変化させていく姿勢が重要だということでしょうか。

分析サービスを提供する(第3章)
データと分析サービスの両方を売る企業にとって最大の難関は、顧客を説得し、これからはデータ分析力がモノを言う時代だとわかってもらうことだという。問題はコストではない。分析で何ができるのか、どんな成功例があるのか、企業経営者はよく理解していないのである。


→ 私自身、データ活用を目的とした分析サービスに関係している立場なのですが、今や「ビッグデータ」の流行もあり、分析の重要性を認識していない経営者は、本書の発刊当初(2008年)に比べれば遥かに少ないと思います。
 しかしながら、実態として顧客にデータ活用(分析を含む)の価値を理解してもらうのは、やはり非常に難しいと感じます。それは企業活動の競争優位という目的に対して、どのようなデータがどのように分析されることで価値を産むのか、それを顧客が主体的に取り組めるかが大きく関係しているからだと思っています。
 分析を価値あるものにするには、「分析のプロ」だけでなく「事業のプロ」の力が不可欠ということ。

分析力の評価と戦略目標(第6章)
企業が組織的に分析力を身につけるには、どのデータにフォーカスするか、どこにリソースを配分するか、そもそもデータ分析で何がしたいのか、明確な戦略が必要である。
(中略)
どこにデータ分析投資を集中するか決めるかに当たっては次の質問をしてみると良い。
・他社との差別化の決め手になるのは何か
・自社の強み、得意分野は何か
・データ分析の力を借りたい部門やプロセスはどれか
・自社事業にとって特に大事な情報は何か
・情報や知識で業績が大幅アップしそうな部門やプロセスはどれか


→ データ分析はしたいけど、どう進めるべきか悩んでいる企業は少なくないと思います。
 シンプルではありますが、着手する上で基本となるポイントが完結に整理され、とても実践的だと感じました。

データ分析が業績改善に結びついているか、適切な業績評価指標を設定し、常にウォッチし、数値的に把握することを怠ってはならない。(第6章)

最優先すべきなのが、その会社の強みや競争力の強化につながる投資であることは言うまでもない。
投資判断そのものをデータ分析に基づいて行うこと、あらゆる意思決定に説明責任を求めること、あくまで結果重視でデータ分析の貢献度をウォッチすることなども重要だ。
こうした努力がデータ志向の強い企業、事実重視の文化を育てることに繋がり、分析投資のリターンを最大化することにもなる。
(第6章)

→ データ分析にはコストがかかります。分析基盤(システム)や人材、分析に要する時間など非常に多くのリソースを費やします。データ分析の取組み自体が企業の事業戦略と連動しているか、業績改善に寄与しているかを提供的に管理・評価することは重要だと思います。
 「データ分析は武器になる」といっても、その武器がコストを回収できないほどの弱々しい武器なら戦えません。ですので、データ分析の貢献度を図る指標や継続的な評価、といったマネジメント活動は必要だと思います。

くどいようだが、分析戦略と言うととかく技術偏重になりやすいので、注意してほしい。
「システムさえ整えれば、あとは自然に分析力がつく」というのは幻想である。
(第6章)

→ いくら様々なデータが揃っても、いくら多機能な分析システムが整備されても、企業にとって武器となりうるような分析結果を導けるわけではありません。
 まずは分析の目的、それは競争優位でも業務改善でも、とにかく何らかのアクションに繋がるものを定めることが重要ですよね。
 分析ノウハウやシステムはその手段にしかすぎないので、その目的を果たせるかどうかで選ぶ必要がありますし、分析を担う人材も、その定められた目的とそれに対する仮説によって価値ある分析を進められると思います。
 「データは大量にあるのだから、分析したら、何か出てくるだろう」という認識は、”幻想”とまでは言いませんが、時間を消費(浪費)することの覚悟が必要かもしれません。

分析の究極の目的は良い意思決定である(続編から引用)

→ このフレーズは、続編「分析力を駆使する企業 発展の五段階」から引用したものですが、データ分析が効果的に威力を発揮するためには、
 ・具体的な目的を明確に持った上で取り組むこと
 ・長期的な取組みと位置づけ、継続的な測定・評価・改善を繰り返すこと

 が重要かと思っています。

 分析に対するIT投資も、情報システムと同様に管理されなければならない対象です。
 企業に利益をもたらす分析でなければ意味がありません。

ちなみに、最終章は「分析競争の未来」ということで、2008年発刊の時点で今後のデータ分析に関する様々な変化について、筆者の予測がいくつか綴られているのですが、2014年の今、当たっているもの、そうでないもの(もしかしたら、まだ先なのかも)が色々と・・・。
そういう部分も含めて最後まで興味深く読む事ができました。
ご興味のある方は、是非ご一読ください。

2014年5月30日金曜日

COBIT5の可能性と課題

河田です。
Blog上は久しぶりの投稿ですが、、、振り返ると数カ月なんてあっという間ですね。

今年から仕事の領域を広げたこともあり、IT投資管理の世界からは少し遠ざかっていますが、自分の備忘録も兼ねて?、今回は、COBIT5について情報を整理したいと思います。

COBITについては、知っている人も多いので改めて紹介するまでもないかもしれませんが・・・
「ITガバナンスのフレームワーク」と認識している人が多いのではないでしょうか?

しかし、COBITの登場から現在までの経緯をひも解くと、実はカバー範囲を段階的に広げてきた興味深いフレームワークです。

COBITフレームワークの進化
(出典:ITGI Japan)
COBIT1~COBIT2は、「IT監査と統制のフレームワーク」として始まり、
 COBIT3で「ITマネジメントのフレームワーク」に広がり、
  COBIT4.0~COBIT4.1では「ITガバナンスのフレームワーク」として広く認知されてきました。
   そして、COBIT5は「事業体のITガバナンス」に拡大されています。

このような経緯を経て、制定されたCOBIT5ですが、

  • 事業全体のビジネスを考慮された「ビジネスフレームワーク」であるコト
  • ステークホルダーのニーズへの合致、価値の創出が原則に掲げられているコト
  • 従来のITガバナンスのフレームワーク(COBIT4.1)とITリスク管理のフレームワーク(Risk IT)、そしてIT投資管理のフレームワーク(Val IT2.0)が統合されたコト
の3つは特に注目すべきポイントだと思っています。

ちなみに、本BlogのテーマであるIT投資管理のフレームワーク(Val IT)については過去に何度か取り上げているので、詳しくは下記リンクを参照して下さい。

次に、COBIT5の特徴は・・・と書きたいところですが、非常に広範囲なテーマを包含・網羅したフレームワークであるため、捉え方次第で異なる気がするので、、、ぜひ下記のサマリー、及び本文に目を通してみてください。


リンクだけでは、不親切なので?、あくまで個人的な視点として、Topicsとして気になった点を、以下に列挙します。

  • 事業体全体のガバナンスにフォーカスするCobit5が扱う範囲は、極めて広く網羅的
  • Cobit5の特徴の一つはガバナンスとマネジメントの分離
  • Cobit5のKeywordはガバナンスのEDM(Evaluate Direction Monitor)
  • GEIT(事業体ITガバナンス)はCEO、BODのための舵取り(タテ)を包含(従来のITガバナンスはCIOによる事業部門の舵取り(ヨコ)という位置付け)
  • COBIT5の事業体の達成目標(17個)、 COBIT5のIT達成目標(17個)は、BSCの考え方とひも付く
  • 実務上のインパクトは、Cobit4.1の成熟度から5のCapabilityモデルへの転換

Topicsだけ書いても、分かりにくいかもしれませんが、伝わる人には伝わるはず???
捉え方次第では、非常に秀逸な完成度の高いフレームだと思いますが、一方で課題もあるように感じています。それは、「実務上の活用方法」ではないかと。

私はISACAの会員でもあるので、COBITの考え方を否定するつもりは全くありません(むしろ、推奨する立場です)が、実務家としては、COBIT5は実務上で準拠するためのモデルというよりも、従来以上に「レファレンスとしての活用」が主となるような気がしています。

少し話が逸れるかもしれませんが、あらゆるマネジメント活動には終わりが無く、机上論では・・・「(マネジメントと名のつくものは)全てやるべき」という話に陥りやすい傾向にあります。
しかし、実務上はマネジメント活動に割けるリソースに限界(現実解と言った方が正しいかも?)は常にあるとも思っています。

COBIT5で、ビジネスの貢献まで視野に入れた上で、広範囲に体系立ててしっかり整理してあることは、本当に凄いことだと思いますが、一方で広さと深さを両立したマネジメントフレームワークは、それを活用するためのリソース的な考慮は少し弱くなってしまうのかもしれませんね。

少し前に参加した経営情報学会のプラクティショナルセミナーで、東京海上日動システムズの横塚さんが「知のフレームワーク」というテーマの講演の中で、「マネジメント活動におけるモニタリングの重要性」として話されていたことの方が、実践性は高いと感じています。

COBIT5のように「ガバナンスという事業を支援する仕組み」を目的としたフレームワークは、活動のモニタリングに際して「できている/できていない」に着目せざるを得ないのに対し、知のフレームワークのように「イノベーションという事業に直接的に関係する取組み」を目的としたフレームワークは、モニタリングにおいて「成果」にフォーカスすることができるという性質があるように感じます。

つまり、前者は時としてリソースとのトレードオフを考慮した取組みの優先度をつけ難いのに対し、後者はその優先度がつけやすい(=実務的には活用しやすい)と考えています。

繰り返しになりますが、COBIT5の可能性は「ビジネス全体のコントロールまで網羅されたマネジメントのフレームワークであること」にあり、一方でその課題は「実務上の活用方法」ではないかと思います。
(誤解を恐れずに言えば、従来以上に利用者、利用方法を選ぶフレームワークと呼べるかもしれません)

最後に、今回は難しいテーマを扱ったため、結論も難しい話になってしまいましたが・・・皆さんは、どう考えますか?
COBIT4.1に比べCOBIT5の活用事例は、まだあまり耳にしませんが、もしご存知の方がいらっしゃったらぜひ教えて下さい。

2014年4月29日火曜日

「ITプロジェクトの信頼構築に向けたプロジェクトリスクマネジメント」を聴講して

中嶋です。
もう4月も終わりですね。花粉症も和らいできて、すごしやすい季節になってきました。

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今回は機会あって、ISACA月例会セミナー「ITプロジェクトの信頼構築に向けたプロジェクトリスクマネジメント」に出席しましたので、そちらについて触れたいと思います。

タイトルだけ見ると「プロジェクトマネジメント」についての話に見えましたが、
実際には「ポートフォリオマネジメント」「プログラムマネジメント」の視点で説明されていました。
方法論というよりも人間的な視点で話をされていたのが興味深かったです。
以下は自身が感じた視点で書いているため、実際の内容とは異なるところもあるかもしれませんが、ご了承下さい。

プロジェクトにおける問題
 1. プログラムとして最適な判断が難しい
 プロジェクト参加メンバーは自身が参画しているプロジェクト以外に興味が無い。
 そのため所々の判断も自身のプロジェクトにとって最も良い選択肢を選びがち。
 プロジェクトだけで見れば最適な判断だったとしても、プログラムとして正しいとは限らず、
 かつその判断が誤っていたことが後になってから気づく。(手戻りが発生する)

 2. ITベンダーは意外とユーザー視点で物事を考えていない(ことが多い)
 これは意外でしたが、振り返ってみるとそうだったなあと感じた内容。
 特に後半フェーズになればなるほど顕著だそうです。
 それは「運用でカバーしていただいて…」なんて言葉を良く聞きますね。
 しぶしぶ了承したものの、実際にやってみるとかなりのコスト増となり、
 運用・保守フェーズで再度改善対応を行うといったこともよくある話です。
 発表者の方もおっしゃっていましたが、そうなってしまうのも当たり前の話で、
 ITベンダーとユーザーの利害関係が一致することは無いから起きてしまうそうです。
 お互い自分たちが良ければそれで良いとなってしまいがち、特に後半フェーズになると、
 疲弊しきっていることが多いため、余計に利害関係が一致しなくなってしまうそうです。

 3. 本当に検討すべき重要な課題が挙がってこない
 実際にアンケートを取って分かった話だそうですが、
 プロジェクトメンバーは課題を共有するメリットを感じられないんだそうです。
 理由として一番大きいのは、
  「課題を挙げても結局は自分で解決するしかない」
 ことが多いことだそうです。
 課題を挙げるにも資料を作ったり、関係各所に説明したりとかなりのコストがかかります。
 にも関わらず、自己解決するしかないのであれば確かに作る時間が無駄ですね。

上記問題を解決するため、第三者機関としてPMOが設置されることが多いのですが、
上記を払拭出来るPMOもまだまだ少ないのが現状。
それもそのはずで、マネジメントスキルは座学で学べるような簡単なモノではなく、
実際に経験しないと身に付かないスキルのため、昔より短納期かつ複雑に絡み合ったプロジェクトを経験したPMOがそもそも少ないためです。
PMPホルダー=より高度なプロジェクトを捌けるという指標でも無いので、誰にお願いすればよいかも分かりませんよね。当たり外れが大きいということです。

とはいうもののPMOが不要ということにはならないと思うので、
個人的にはプロジェクトでPMOに育ってもらう(PMOを育てる)という考えを持って、
プロジェクトを運営していくのが良いと個人的には思います。

私も以前のプロジェクトでお客様に育ててもらい、色んな経験を積ませていただきました。
お金をいただきながら勉強させてもらうというのは申し訳ない気分にもなりましたが、
その分結果を出さねばという想いも強くなり、結果的にお互いにとって良い関係を築け、
かつプロジェクトも成功出来たように思います。(あくまで個人の中での成功ですが)

そういった意味では参画してもらうPMOに必要なスキルは、
「成長意欲がある義理人情に厚い人」が良いのでは?と思った今日この頃でした。
もちろん「マネジメントスキル」「テクニカルスキル」も必要ですけどね。