2014年10月31日金曜日

プロジェクト成功の評価基準

藤原です。
今回の投稿はプロジェクトに関する気になる数字から。

プロジェクト成功率75%
とても興味深い数字ですが、日経コンピュータ10月16日号の特集記事「情報システムのリアル 独自調査で33の疑問を徹底分析」からの抜粋となります。

有効回答=3069件(ユーザー企業1775件、ITベンダー1294件)に基づく調査結果からまとめられたもので、記事では「開発」「運用」「ビジネス慣習」「ハード・ソフト」「サービス」等、様々な質問項目に対する結果がまとめられています。

その調査の一項目で「あなたが関わっている・知っている新規システムの導入・開発プロジェクトの成功率は何割か」という質問に対して、プロジェクト期間毎(3ヶ月以内、3-6ヶ月、6ヶ月-1年未満、1年以上)での回答を平均した結果「プロジェクト成功率は75%」というものでした。

75%。意外と高いという印象ではないでしょうか?

プロジェクト成功の定義
ここで気になるのが「プロジェクト成功の定義」です。
調査では「当初予定していた品質・予算・納期(QCD)を順守できた」を成功の定義としています。
この調査における成功の定義の設定について文句を言いたいわけではありません。
この評価基準は極めて重要だと私自身認識していますし、この定義に基づくプロジェクト成功率がどのように推移しているかは非常に興味があります。

ただ、本来の「プロジェクトの成功」は「ビジネス上の価値(ベネフィット)の獲得」であると私は考えています。
プロジェクトは投資活動ですので、その投資に対する効果が求められます。プロジェクトはその目的達成に従って活動すべきであり、本来の「成功」はそこにあるのかなと。
「QCDの順守」はプロジェクトが持つ本来の目的達成の評価指標ではなく、あくまで1つの要素であると捉えています。

実際には「ユーザ、ベンダーなど立場によって違う」「プロジェクトライフサイクルではそこまで評価できない」「マネジメントスコープが違う」という声もあるかと思いますが。。。

今回の調査結果「プロジェクト成功率=75%」という数字を見て感じたことは、
  • 「QCDの順守」という評価に基づく成功率が高まっていることから『プロジェクト遂行』に関するマネジメントの成熟度は確実に向上している。
  • これは、プロジェクトマネジメントに求められる評価基準、成功定義がより上流、つまり本来の目的である「ビジネス上の価値(ベネフィット)の獲得」を意識したものへと高度化していく流れの兆しかもしれない。
ということです。

単にQCDを順守するだけでなく(それは当たり前として)、プロジェクト本来の目的、企業の戦略に合致したビジネス上の価値獲得を意識し、新たな提言、アイデアや技術力を発揮することや、逆に目的達成に寄与しない場合は、厳しい判断を促すといった方向修正(というか勇気)もマネジメントに求められる点として重要さを増してくるような気がします。

実際には難しいんですけどね。
ただ、そういう「意識を持つ」ということは重要だと思っています。

ビジネス上の価値(ベネフィット)の獲得という評価軸
では、プロジェクトが目指す「ビジネス上の価値の獲得」という成功基準はどのように評価すべきなのでしょうか。
この点について参考になりそうな記事があったので引用します。
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あらゆるプロジェクトは目標とするベネフィットを実現する必要があります。企業が成功を測定するための唯一の方法が、それらのベネフィットを予め定義してき、各プロジェクトの完了後にそれが組織にどのような影響を及ぼしたか追跡することです。
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メトリクスを設定していなければビジネス価値を測定することはできません。そして、ビジネス価値を測定していなければ顧客のニーズを満たすことはできないのです。
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戦略的価値を評価する5つの測定基準の例

価値:ソリューションは組織を目標に向かって前進させるものか?
満足度:代替案(他の選択肢)と比較して、ユーザーに価値を創出するものか?
パフォーマンス:契約どおりの内容を契約どおりのレベルで実施できたか?
コスト(費用対効果):コストに見合うだけの価値を実現できたか?
リスク:適切な保護や統制によってリスクを軽減できるか?
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本来、同じプロジェクトは2つとありません。しかし、メトリクスの観点では、組織内の全てのプロジェクトを同じ場所に並べ、同質のものとしてポートフォリオまたはプログラムの観点から評価しなければなりません。
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PM Network(2013年8月号) 「Value Proposition」より抜粋

プロジェクトマネジメントに求められるものとして、プログラムやポートフォリオの視点における評価基準に応える責任も含まれていると言えます。

記事の例を参考に、今後のプロジェクト成功の評価基準として:「QCD+VSPCR」というのも一つの考え方としてアリかもしれません。


2014年9月30日火曜日

データ視点のIT資産価値評価の検討

河田です。
前月の投稿「IT投資管理視点でみるビックデータ活用の課題」に関係するテーマについて、今月上旬に浜名湖フォーラム(旧カリアック会議)で発表しましたので、今回その話について少しご紹介します。

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浜名湖フォーラムについては、昨年8月にもこのBlog上で紹介していますが
  • 一般社団法人 経営情報学会 中小企業のIT経営研究部会
  • 一般社団法人 クラウドサービス推進機構
  • 特定非営利活動法人 ITコーディネータ協会
3者合同の研究合宿で、様々な分野の専門家、有識者、経営者の方々が集まり、肩書きや立場に関係なく議論するというオープンな形式のフォーラムです。

私は、今年度から新たに取り組んでいるIT資産価値研究会のメンバーの一人として、「IT資産価値の多面的な評価の枠組み」について、発表しました。



今回の発表の前提となる課題認識は、
企業活動に関わるデータの増加、重要性の高まりに比して、企業が取り扱うデータ、企業情報システムにおけるデータの資産性、価値評価の検討は十分になされているとは言えない。
また近年、データ(特に分析)に着目した研究は数多くあるが、それらの多くはマーケティング分野のみ、若しくはビッグデータのみに集中している。
企業に眠っているデータに着目し、データのIT資産価値評価を検討する。


というものでしたが、
今回の発表を通して、下記の4点をお話しました。
  • データの重要性、環境変化(データの増大、技術の進化)、分析による差別化/業績貢献等を考えれば、データをITリソースの一つとして資産価値評価することは重要。
  • 但し、その評価はデータ単体ではなく分析(目的、用途)とセットで、その評価対象は企業情報システムが扱うデータに絞って、企業独自の基準で考えるべき。
  • 多様性があり、システム毎に活用目的が異なるデータに対して、唯一無二の評価方法は存在しないが、データを俯瞰できる状態に(データカタログ化)し、
    - 企業独自の価値の源泉として位置付けること、
    - 品質を維持、管理すること(価値を損なわないようにすること)、
    - 複数の評価視点を組込む形でその可能性(企業独自の価値)を把握すること、
    に取り組むことは重要。
  • また、従来の企業におけるデータ分析は、主として売上拡大(特にマーケティング)ばかりが重視されてきたが、生産性向上に寄与する潜在的なデータ(既に手元にあるのに気づいていないデータ)に目を向けることも重要。

また上記を含め私が参加者の皆さんに発表を通して伝えたかった一番のポイントは、
ログデータは「見えなかったもの(できなかったこと)を見える化する(できるようにする)」、「将来の行動を予測する」ためのデータとして、活用用途を再検討する必要性がある
という点です。

まだまだ研究途上ですが、企業におけるIT資産価値の測定には多様性があり、その中でも「データ」に関する着目はもう少し踏み込んできょうつうにんしきを高められると良いな・・・と考えています。

私自身の研究としても(まだまだ途中段階ですが)ここに至るまでに、かなり迷走していた時期もあったのですが、研究会の皆さんに前向きなアドバイスを頂けた結果として、ある程度は形作るところまでに何とか至りました。ホント、感謝感謝です。

システムの価値は、会計的には減価償却的な側面しか認められていませんが、実際には多元的な価値の側面があり、また「データ」についても分析の価値は語られていても、データそのものについての議論はまだまだこれからと感じています。

事前の準備不足もあり、プレゼンは相変わらずイマイチでしたが・・・今回の発表を通して、多くの有識者の方々から貴重な指摘をもらえたことは、とても有難く、また研究の意義も含めて共感のコメントを数多く頂けたことは、とても嬉しかったです。

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浜名湖フォーラムは今回で4回目の参加となりましたが、各分野の専門の方から興味深い話がきけるので、本当に勉強になります。

主催者の皆さま、IT資産価値研究会の皆さま、そして関係者、参加者の皆さま、
本当にありがとうございました!!!

最後になりましたが、今年から複数企業の有識者の方々と共に「IT資産価値研究会」を定期的に実施しています。
ゲスト参加も大歓迎ですので、該当テーマに関心がある方は、ご一報下さい。
#結びの一文は、去年と同じです。。。

2014年8月31日日曜日

IT投資管理視点でみるビックデータ活用の課題

河田です。
〆切前にBlogを慌てて書いていると、学生時代の夏休みの宿題を思い出します。
大人になっても、人間の中身はあまり変わらないのかもしれませんね。

少し仰々しいタイトルになりましたが、社外活動で調査レポートを眺めていたら、調査年度、主体の違うレポートから興味深い共通性と違いに気がついたので、今回はその話を少し。

ご紹介するレポートは、以下の2つです。

JUASの調査は、年次でIT投資管理の傾向が把握できる貴重なレポートですが、今年度はトピックスの一つとして「ITトレンド(ビッグデータ)」が取り上げられています。
NRIの調査は、タイトルの通り「ビッグデータの利活用」にターゲットをあてたものです。

この2つのレポートから、「ビッグデータの活用状況」「ビッグデータの活用における課題」の2点に焦点をあてて、引用、比較しまみます。


【ビッグデータの活用状況】

まず初めにNRIの調査結果では、


(出典:NRI「ビッグデータの利活用に関するアンケート調査」
  • 調査対象企業の内、約6割がビッグデータ活用を自社の検討課題と認識、今後の課題認識も含めるとその比率は約8割へ。
  • 活用状況は、企業規模(売上規模)と概ね相関関係があり、売上規模が1兆円以上の会社では約3割の企業が以前から活用していると回答しているのに対し、同規模が1000億円未満の会社では約1割に留まる。

次にJUASの調査結果では、

(出典:JUAS「企業IT動向調査2014」
  • 調査対象企業の内、現状でビッグデータを活用しているのは全体の1割未満(導入済みが4.8%、導入準備中が3.6%)で、検討中の企業を含めても2割強。
  • 但し、今後(3年後)は導入済みが10%、導入準備中が12%、検討中が23.5%と大幅な増加見込みであり、その比率は4割を超える。
  • 活用状況は、企業規模(売上規模)との相関関係があり、売上規模が1000億円以上の会社では導入済みが7.3%、導入準備中が6.7%、検討中が24.2%と3年後の平均値に近い。

「活用状況」は、調査方法等によって数値に多少のバラつきがありますが、2つのレポートで概ね同じ傾向を示しています。


【ビッグデータ活用における課題】

NRIの調査結果では、

(出典:NRI「ビッグデータの利活用に関するアンケート調査」

  • ビッグデータ活用における課題は、上位から「導入目的の明確化」、「投資対効果の説明」、「担当者のスキル不足」、「人材不足」、「人数不足」。
  • 「投資対効果の説明」を課題視している比率は45%。


次にJUASの調査結果では、

(出典:JUAS「企業IT動向調査2014」
  • ビッグデータ活用における課題は、上位から「導入目的の明確化」、「体制/組織の整備」、「技術の習得、選択」。
  • 「費用対効果の説明」を課題視している比率は約25%(5番目の課題)。

「課題」については、導入目的の明確化が一番の課題であること、人材・体制・組織といったヒト系の課題が多いことは、2つのレポートに共通していますが、「投資対効果(費用対効果)の説明」に対する課題認識の比率は、2つのレポートで比較的大きな差異が出ています。
また、JUASの調査結果において、該当要因を一番の理由に挙げた企業は5.4%と比率としても少ないと言えます。


長くなりましたが、ポイントをまとめると
  • ビッグデータ活用における一番の課題が、「導入目的の明確化」という手段と目的の逆転現象が発生していること
  • ビッグデータ活用において、「投資対効果の説明」を課題視している企業は大きく減少してきている(可能性がある)こと
この2点については、ビッグデータ活用をIT投資管理のテーマとして考える上で、今後も注視しておく意義があると思います。
少し先読みすれば、「ビッグデータ」がバズワードの期間を超えて、多くの企業で地に足のついた検討・議論が進んでいると言えるのかもしれませんね。

2014年7月31日木曜日

「ドラッカー・スクールで学んだ本当のマネジメント」を読んで

中嶋です。
W杯が終わり梅雨も明け、いよいよ夏到来です。
猛暑続きで屋内に籠って読書することが多くなったこともあり、
先月に引き続き読書ネタを書かせていただきます。

今回のテーマはこちらです。

ドラッカー・スクールで学んだ本当のマネジメント
ドラッカー・スクールで学んだ本当のマネジメント
藤田勝利 著

出版社:日本実業出版社
発売日:2013-07-19
価格 :¥1,944


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ドラッカーといえばマネジメント、マネジメントといえばドラッカーということで、
ドラッカー関連の書籍の1冊として、今回手に取って読みました。

本書は実際に著者がドラッカー・スクールに留学し、
そこでマネジメントについて学んだことを実際にどう活かしたかという視点で
まとめています。

目次:
第1章: 「セルフ・マネジメント」から始まる
第2章: マネージャーは何をめざすのか
第3章: マーケティングの本質−顧客創造的な会社とは
第4章: イノベーションという最強の戦略

第5章: 会計とマネジメントの「つながり」
第6章: 成果をあげる組織とチーム
第7章: 情報技術とコミュニケーションについて本当に大事なこと

若干異なるところもあるかもしれませんが、
実はこの章立て、スクールで実際に学ぶ順に章立てしているそうです。
いきなり組織論を学ぶのではなく、
しかも自分自身(セルフ・マネジメント)から始めるというところが、
個人的には驚きでした。

というのも、ドラッカー・スクールには以下の原則があるそうです。

 「自分自身をマネジメントできなければ、組織をマネジメントすることはできない」
 (第1章より引用)

どうですか?
当たり前の話ではありますが、改めて言葉にされると、実に耳が痛くなりますね。
過去を振り返ってみても、なかなか自分を理解している人は少ないように思います。

これはマネジメントに携わる人だけに限った話ではありません。
まずは自分。自分自身の強み・弱み、興味がある分野、今後やってみたいこと
しっかり理解していないと、弱みばかり出すことになってしまって
成果も出せない状態になりかねません。
※W杯でも個の力、レベルというのが問われていたように思います。

やはり強い組織、成果を出す組織とは、
 個々が自分の役割を分かっている→自分の強みを知っている
であることが絶対条件だと思います。
また、強みにフォーカスした組織であれば相乗効果として、
 お互いを尊重し合える、信頼し合える
ことにも繋がります。「信頼し合える」とは「任せる」ことが出来るということです。
信頼出来なければ"指示"は出来ても、"委任"は出来ないと思います。
"指示"ではコントロールしているだけで、マネジメントとはいえません。
信頼し合える組織になるためにも、マネージャーは組織体制を形成するときに、
個々のメンバーの個性をしっかり理解していただきたいものです。

自分自身が過去に携わったプロジェクトを振り返ってみても、
成功したプロジェクトは大変だった時期があったとしても活気があり、
全体としてモチベーションが高かったように感じます。
それも冷静に考えてみると、誰に何をやってもらうのがいいか?と
人にフォーカスを当てて組織づくりをしていたように思います。
そう思うと、計画って面倒くさいことだけど重要なことなんだと改めて思いました。

第2章では、
 マネジメントとは、人と組織を活かして社会的な成果をあげる、そして、結果として
 多くの人の人生を、よりよくすることができる仕事である(第2章より引用)
と書いてあるのも納得です。人の成長、楽しさを生み出せる仕事ではないかと思います。
一番楽しいのは、信頼出来るメンバーとお客さまへの成果を出すことです。
それを推進していけるのが、マネジメントであり、マネージャーだと私は思っています。

管理職ではなく、マネージャーになりたいという人がもっと増えればいいのに…
という想いを残して、今回のブログはおしまいにしたいと思います。

2014年6月30日月曜日

「分析力を武器とする企業」を読んで

藤原です。
現在、企業におけるデータ活用を目的とした各種サービスの開発に携わっていることもあり、以前から気になっていた書籍を読んでみました。

分析力を武器とする企業分析力を武器とする企業
トーマス・H・ダベンポート ジェーン・G・ハリス 村井 章子

日経BP社 2008-07-24
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”データ分析が企業活動における競争優位を生み出す”というメインテーマに沿って、分析を武器にする企業の特徴や具体的な事例、活用方法から、その分析活動を支える組織、人材、技術に至るまで幅広くまとめられています。
2008年に発刊された書籍であることから、企業の事例など多少の古さは感じますが、企業においてデータ活用を考える上で、組織としての在り方、人材といった点について多くの示唆がある良書だと思います。

続編「分析力を駆使する企業 発展の五段階」も発刊されており、企業においてデータ分析に取り組むための実践的なアプローチ等が書かれています。
こちらの方もまた別の機会にご紹介したいと思います。

さて、本書は2部構成(全9章)でまとめられています。

第1部:分析力を武器とする企業の特徴(第1章〜第5章)
 →データ分析の定義から、武器にできている企業の特徴、データ分析の活用事例など
第2部:分析力を組織力にする(第6章〜第9章)
 →データ分析に取り組むための組織戦略、人材、技術など

企業が競争優位を勝ち取り、成長を続けていくためにはデータ分析が有益であること、それを様々な企業の事例や現象によって、その主張を裏付けるとともに、そのデータ分析力を高めるために、企業としてどう取り組むべきか、という点がまとめられているのですが、その中でいくつか自分が感じた点などを綴ってみたいと思います。

本書で言う分析とは、データを多角的・多面的に活用して統計分析・定量分析を行い、説明モデル・予測モデルを作成し、事実に基づく意思決定、行動に結びつけるところまでを意味する。(第1章)

→ 分析の定義として「行動に結びつける」を含んでいる点で納得です。
 どんなデータ分析も目的を伴わないと意味が無いですし、その結果に基づき、実際にアクションを起こせることが重要だと考えます。
 データ分析は定例会議の為の報告サマリ(可視化)の為にあるのではないので、その先にどう改善できるのか、どこを強化すべきか、というアクションに結びつくような意味のある分析内容(対象データや分析指標)でなくてはいけないですよね。

分析力を武器にする企業の特徴(第2章)
第1: 分析力が戦略的競争優位性のベースとなっている
第2: 分析に組織を挙げて取り組んでいる
第3: 経営幹部が分析力の活用に熱心である
第4: 分析力に社運を賭け戦略の中心に据えている


→ 今やコンシューマーを対象としたサービスを提供する企業はデータ分析は必須であり、組織的に取り組んでいるのが現状ですね。ただ、競争優位という部分だけでなく、企業内の業務活動(業務改善、精度向上、生産性向上など)においても分析力は有益だという点で、分析の対象を様々な分野・部門に応用していく企業が増えていくでしょうね。

分析力は持続可能な競争優位となりうるか(第3章)
競争優位というものは、動く標的である。これを仕留めるためには、絶え間ない改善とイノベーションが必要だ。


→ データ分析に限らず、企業活動全般に言えることではありますが、どのような取組みも継続的改善活動を伴って、効果を維持・発展できるということですね。
 データ分析は、対象データの選定やアルゴリズム等、有益な結果を得られるまでに多くの時間や試行錯誤が必要となります。
 しかし、その有益な分析パターンも変わっていくことを認識し、執着するのではなく、柔軟に分析対象やアルゴリズムを変化させていく姿勢が重要だということでしょうか。

分析サービスを提供する(第3章)
データと分析サービスの両方を売る企業にとって最大の難関は、顧客を説得し、これからはデータ分析力がモノを言う時代だとわかってもらうことだという。問題はコストではない。分析で何ができるのか、どんな成功例があるのか、企業経営者はよく理解していないのである。


→ 私自身、データ活用を目的とした分析サービスに関係している立場なのですが、今や「ビッグデータ」の流行もあり、分析の重要性を認識していない経営者は、本書の発刊当初(2008年)に比べれば遥かに少ないと思います。
 しかしながら、実態として顧客にデータ活用(分析を含む)の価値を理解してもらうのは、やはり非常に難しいと感じます。それは企業活動の競争優位という目的に対して、どのようなデータがどのように分析されることで価値を産むのか、それを顧客が主体的に取り組めるかが大きく関係しているからだと思っています。
 分析を価値あるものにするには、「分析のプロ」だけでなく「事業のプロ」の力が不可欠ということ。

分析力の評価と戦略目標(第6章)
企業が組織的に分析力を身につけるには、どのデータにフォーカスするか、どこにリソースを配分するか、そもそもデータ分析で何がしたいのか、明確な戦略が必要である。
(中略)
どこにデータ分析投資を集中するか決めるかに当たっては次の質問をしてみると良い。
・他社との差別化の決め手になるのは何か
・自社の強み、得意分野は何か
・データ分析の力を借りたい部門やプロセスはどれか
・自社事業にとって特に大事な情報は何か
・情報や知識で業績が大幅アップしそうな部門やプロセスはどれか


→ データ分析はしたいけど、どう進めるべきか悩んでいる企業は少なくないと思います。
 シンプルではありますが、着手する上で基本となるポイントが完結に整理され、とても実践的だと感じました。

データ分析が業績改善に結びついているか、適切な業績評価指標を設定し、常にウォッチし、数値的に把握することを怠ってはならない。(第6章)

最優先すべきなのが、その会社の強みや競争力の強化につながる投資であることは言うまでもない。
投資判断そのものをデータ分析に基づいて行うこと、あらゆる意思決定に説明責任を求めること、あくまで結果重視でデータ分析の貢献度をウォッチすることなども重要だ。
こうした努力がデータ志向の強い企業、事実重視の文化を育てることに繋がり、分析投資のリターンを最大化することにもなる。
(第6章)

→ データ分析にはコストがかかります。分析基盤(システム)や人材、分析に要する時間など非常に多くのリソースを費やします。データ分析の取組み自体が企業の事業戦略と連動しているか、業績改善に寄与しているかを提供的に管理・評価することは重要だと思います。
 「データ分析は武器になる」といっても、その武器がコストを回収できないほどの弱々しい武器なら戦えません。ですので、データ分析の貢献度を図る指標や継続的な評価、といったマネジメント活動は必要だと思います。

くどいようだが、分析戦略と言うととかく技術偏重になりやすいので、注意してほしい。
「システムさえ整えれば、あとは自然に分析力がつく」というのは幻想である。
(第6章)

→ いくら様々なデータが揃っても、いくら多機能な分析システムが整備されても、企業にとって武器となりうるような分析結果を導けるわけではありません。
 まずは分析の目的、それは競争優位でも業務改善でも、とにかく何らかのアクションに繋がるものを定めることが重要ですよね。
 分析ノウハウやシステムはその手段にしかすぎないので、その目的を果たせるかどうかで選ぶ必要がありますし、分析を担う人材も、その定められた目的とそれに対する仮説によって価値ある分析を進められると思います。
 「データは大量にあるのだから、分析したら、何か出てくるだろう」という認識は、”幻想”とまでは言いませんが、時間を消費(浪費)することの覚悟が必要かもしれません。

分析の究極の目的は良い意思決定である(続編から引用)

→ このフレーズは、続編「分析力を駆使する企業 発展の五段階」から引用したものですが、データ分析が効果的に威力を発揮するためには、
 ・具体的な目的を明確に持った上で取り組むこと
 ・長期的な取組みと位置づけ、継続的な測定・評価・改善を繰り返すこと

 が重要かと思っています。

 分析に対するIT投資も、情報システムと同様に管理されなければならない対象です。
 企業に利益をもたらす分析でなければ意味がありません。

ちなみに、最終章は「分析競争の未来」ということで、2008年発刊の時点で今後のデータ分析に関する様々な変化について、筆者の予測がいくつか綴られているのですが、2014年の今、当たっているもの、そうでないもの(もしかしたら、まだ先なのかも)が色々と・・・。
そういう部分も含めて最後まで興味深く読む事ができました。
ご興味のある方は、是非ご一読ください。